●格差社会の広がり

 近年、日本国内の経済格差に対する関心が日増しに高まっています。国家の経済的豊かさを示す名目GDPのランキングにおいて、日本は、アメリカ、中国に次いで第3位(2016年)です。この結果が示す通り、間違いなく日本は世界有数の経済大国といえるでしょう。

 しかしながら、1985年以降、家計収入の平均はほとんど増加しておらず、現在においては年収300万円以下の人口が全給与所得者の4割を占めています。同じく1980年代中盤から所得格差は拡大し、OECD(経済協力開発機構)の貧困率の調査では、メキシコ、トルコ、アメリカに次いで日本は先進国中で第4位(2000年半ば)という結果になっています。また、厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」(2012年)によると、子どもの貧困率は16.3パーセント。つまり、日本の子どもの6人に1人が貧困状態にあるということです。

●美貌の差がどれほどの経済格差をつくり出しているのか

 情報格差、教育格差、健康格差、夫婦格差、世代間格差、地域格差…。格差の論点は、多岐にわたります。なかでも際立って興味深いのが「美貌格差」という見方です。『美貌格差 生まれつき不平等の経済学』の著者ダニエル・S・ハマーメッシュ氏は、美貌の差がどれほどの経済格差をつくり出しているのかを明らかにしました。

 調査結果は、被験者の美貌を5段階で評価し、平均を3点とした場合、平均より高く評価された女性(4〜5点)は平凡な容姿の女性より8パーセント収入が多く、平均より低く評価された女性(1〜2点)は4パーセント収入が少ないというものでした。要するに美人は8パーセントのプレミアムを享受し、不美人は4パーセントのペナルティを支払っているということです。

●「美貌格差」は総額3600万円!?

 仮に20代女性の平均収入を300万円と想定すると、美人は年間24万円のプレミアムを受け取り、不美人は12万円のペナルティを支払っていることになります。この結果をひどい格差だと考えるか、たいしたことないと思うかは、それぞれ個人の価値観の違いによるかもしれません。

 しかし、一生涯通算で考えると、かなり印象が変わってくるはずです。大卒サラリーマンの平均生涯賃金は、退職金を含めて約3億円といわれています。これを美貌格差の調査結果に当てはめると、美人は生涯に2400万円得をし、不美人は1200万円も損をしており、美貌格差の生涯総額は3600万円にもなるのです。

●「持てる魅力を最大限に生かせば、成功は自ずと手に入る」

 「格差」という言葉で語るとどうしてもネガティブな印象が残ります。その一方、『エロティック・キャピタル すべてが手に入る自分磨き』の著者キャサリン・ハキム氏は、むしろ美貌が資産を生み出すことに対して、もっと肯定的に認知し評価すべきことを訴えています。

 「エロティック・キャピタル」とは、「人を引きつける魅力」全般を意味します。ハマーメッシュ氏のいう「美貌」よりも、人の外見的美しさについてかなり広い意味で捉えていると思われます。詳細は割愛しますが、決め手となる要素には、対人スキルや快活さ(生き生きと輝いていること)、社会的な自己演出力なども含まれます。「持てる魅力を最大限に生かせば、成功は自ずと手に入る」というその理論は、「美貌格差」を乗り越える一助になることでしょう。


<参考文献>
・『美貌格差』(ダニエル・S・ハマーメッシュ著、東洋経済新報社)
・『エロティック・キャピタル』(キャサリン・ハキム著、共同通信社)