限られたスペースへの人口集中を余儀なくされる都市部では、職場から住宅まで高層化しています。その発端は、1997年、廊下・階段等を容積率の計算から除外する建築基準法の改正案の成立です。結果、超高層マンションが急増し、東京都心や湾岸地域などにタワーマンションとよばれる居住環境が大量に供給されるようになりました。

 ウォーターフロントの高層階に居住するライフスタイルに加え、近年の金利優遇からブームとなっているタワーマンションですが、「高層ビル、タワーマンションの健康被害」という噂がまことしやかに囁かれるようになりました。いわゆる、6階以上の居住で発症するという「高層階病」「超高層ビル症候群」、その実態はどうなのでしょうか?

●低気圧、大気汚染、揺れやすさなどが原因か

 例えば、最上階の高さが200mほどになる高層階では、気圧の変化で起こる耳鳴り、めまい、不眠の症状が出やすく、関節痛、腰痛を訴える人が多くなるとのこと。階でいえばおよそ50階前後になるそうですが、そこでは特に女性の場合、生理不順になることもあるとのことです。

 また、これはロケーションにもよるところですが、近くに工場地帯や高速道路がある場合、排気ガス、光化学スモッグ、排煙の被害が報告されています。高層階だからこそ空気がきれいという予測に反して、「空気があまりにも悪かった」「喘息などの不安」を口にする人も多いようです。

 ほかにも、タワーマンション特有の免震構造から、高層階になればなるほど揺れやすくなっていることから、車などに酔いやすいといった三半規管が弱い人にとっては、日常、揺れやすい環境から苦痛に感じることが多いとのことです。

●イギリスでは育児世帯が4階以上への入居を禁止

 タワーマンションのブーム以前、1994年の「厚生省心身障害研究平成5年度研究報告」に収録されている東海大学医学部講師の逢坂文夫氏の論文「住居環境の妊婦に及ぼす健康影響について」に記されたこのような報告があります。

 当時、横浜市の3つの福祉保健センターにおいて4カ月検診を受けた母親の中で第一子を出生した人461名を対象にした調査で、1階〜2階で約6.0パーセント、3階〜5階で8.8パーセント、6階以上で20.88パーセント、というように、高層階居住によって流産、死産の割合が高まっているというものでした。

 海外においても、イギリス、フランス、アメリカではなんらかの規制が設けられているとのこと。特にイギリスでは育児世帯は、4階以上への入居が法律で禁止されているようです。

●心身に及ぶ健康不安が指摘されることも

 「超高層ビル症候群」は、低気圧や揺れによる身体的なトラブルばかりでなく、ストレスを生じさせ、うつ病を発症、子どもが他人との関係性をうまく構築できず不登校や引きこもりになるというケースや、自殺願望や対人恐怖症まで芽生えるという心身に及ぶ健康不安が指摘されることもあります。

 もちろん、これらが現在の超高層ビルすべてに当てはまるということではないでしょうが、いずれにしても高層階居住は、すでに住んでいる人はもちろん、これから住むという人の共通の基盤であるため、どういった可能性があるか、今後の調査が望まれます。