トルコ軍艦エルトゥールル号のアリ・ベイ艦長の子孫、イエニ・ハサン・ユジェルさん(58)が23日、和歌山県串本町を訪れた。アリ・ベイ艦長がトルコから日本に航海、滞在中に妻のアイシェさんに送った手紙を集めた本も持参し、町に寄贈した。

 アリ・ベイ艦長は1847年生まれ。数カ国語に堪能で製図も得意で、操艦術を見込まれ、エ号指揮官に任命されたという。1890年9月16日のエ号遭難により43歳で亡くなったが、遺体は見つかっていない。

 玄孫に当たるユジェルさんは、トルコ系カナダ人。眼科医、神経病理学博士で、トロント大学眼科病理学実験所の所長で教授を務める。東京都での学会に出席するため来日し、その足で以前から来たかったという串本を初めて訪れた。

 この日、樫野崎にあるトルコ記念館やエ号遭難慰霊碑などを見学し、同町串本の町役場本庁舎町長室を訪問。ユジェルさんは、慰霊碑に献花して殉難将士に熱い思いで敬意や感謝を示したこと、故郷の先祖の墓に供えたいと樫野の石を拾ったことなどを田嶋勝正町長に話した。

 ユジェルさんは「家族の間では、串本のことはいつも話題になっていて、訪れたい場所だった。串本に来て、慰霊碑などを大事にしてくれていることに心打たれた。印象的な思い出に残る旅になった」と感慨深そうだった。

 田嶋町長は「126年前の出来事は大変悲しいことだったが、そこから日本とトルコの交流がスタートした。最初の交流の原点が串本だと言ってもらっていることに対し、ものすごく誇りに思っている」と話した。

 ユジェルさんは、アリ・ベイ艦長が旅の先々から妻アイシェさんに書いて送った手紙を集めた本を見せた。ユジェルさんの叔母、ジャーナン・ユジェル・エルオナトゥさん(1926―2013)によって編集されたもので、1889年7月から90年7月までの約20通の手紙が記されている。エ号の事故の説明などを含め83ページ。家族を思いやる内容や、日本に関する記述も見られるという。

 田嶋町長は「エ号乗組員の中で有名なのは、司令官のオスマンパシャとアリ・ベイ艦長。その子孫の方が串本を訪ねていただいたのをうれしく思う。今後も慰霊碑を守り続けていきたいと思うので、安心してください」と述べた。