5年前の台風12号で民家が土石流にのみ込まれるなど、甚大な被害を受けた和歌山県田辺市熊野(いや)で、住民や出身者が百間山渓谷を中心にした地区の活性化に乗り出した。住民らは「水害で過疎化が一層進んだ。なんとか活気づけたい」と意気込む。

 2011年9月にあった水害では熊野地区上流部に土砂や岩が流れ込み、民家や田畑がのみ込まれ、死者も出た。転居を余儀なくされた住民もいて、水害前に19世帯30人だった世帯数は、いまは12世帯19人になっている。

 水害後5年たち、行政による河川や道路の復旧が進んできたことから、今後は住民自らが中心となって復興を目指そうと立ち上がった。岡田克哉さん(57)ら住民と上富田町市ノ瀬の岡田信彦さん(60)ら出身者の計6人で「熊野ふるさと会」を発足させた。克哉さんが会長、信彦さんが副会長になった。

 活性化の核となるのは百間山渓谷。登山路に沿った渓流に大小いくつもの滝や淵が連なる景勝地で、旧大塔村が1970年代に橋を架けたり、階段を設けたりして安全に歩けるように整備し、トレッキングコースとして売り出した。県外からも山歩き愛好者らが訪れる人気のコースだが、水害によって立ち入りが難しくなっていた。それが入り口付近の河川や道路の復旧により、昨年秋から立ち入りできるようになった。

 克哉さんらは「地区を活気づけるため、先人たちが百間山渓谷を整備し、売り出してきた。地区の宝であり、私たちはそれを引き継いでいきたい」。今後、安全に歩けるように保全整備を続けていきたいという。来春にはイベントを計画している。

 渓谷の入り口付近にあるキャンプ場「百間山渓谷キャンプ村」も地区で欠かせない。水害の影響で閉鎖したままで、再開への願いを込め、6日から場内の整備を始めた。市大塔行政局産業建設課の了解を得て、小屋などにかぶさっている樹木を切るなどの作業を続ける。