2016年7月21日、3回目となるAging Styleとグッドデザイン賞のコラボレーショントークイベントが、東京丸の内のGOOD DESIGN Marunouchiで開催された。

「食とデザイン」をテーマに、北里大学北里研究所病院・糖尿病センター長の山田悟医師と、フードデザイナーのモコメシこと小沢朋子氏が、互いに独自の視点で「食べる」ということを読み解くイベントとなった。

「おいしいものは不健康」ではない

山田悟医師は、糖尿病の食事療法でもあり、肥満やメタボの解消も期待できると話題の「ロカボ(低糖質食)」の提唱者として知られ、エビデンス(科学的な実証)に基づく食と健康の関係について詳しい。

イベントでも、糖尿病専門医の視点から、「食後血糖値が急激に上昇する人は、認知機能が低下する」「高血糖の人や糖尿病患者には認知症患者も多い」といった研究を紹介。糖尿病患者に限らず、今は健康な人でも、日常的に「血糖コントロール(血糖値の急激な変化を抑える)」を心がけることが重要であると語った。

血糖コントロールに限らず、減量のための食事療法など、いわゆる「健康的な食事」は、それほどおいしくない、どちらかといえば味気ない食事で、「健康のためだから、多少まずくでも我慢して食べる」というイメージもあるのではないだろうか。

しかし、山田医師は「美食と健康は必ずしもトレードオフではない」という。

「いくら健康的でも、おいしくない食事では続けていくモチベーションが湧かず、結局やめてしまう。おいしく、楽しく、食べて健康になれてこそ、健康的な食事といえるはずです」(山田医師)

山田医師が提唱するロカボの場合、注意すべきなのは糖質の量だけで、カロリーは気にせず、むしろたんぱく質や油脂をしっかり豊富にとってよい。また、糖質を一切口にしてはいけないわけではないので、主食も毎食40グラム(1日130グラム以下)程度なら食べて構わない。

アルコールも、糖質が少ないワインや蒸留酒なら口にできるし、低糖質のものならスイーツ類も問題ない。今回のイベントでも、シマダヤやモンテール、ローソンなどが参加し、パンやうどん、シュークリームなど各社が販売している多様な低糖質の商品も紹介され、試食もできた。会場では、シュークリームを食べて「普通に美味しいので驚いた」という声も聞かれた。記者はうどんとパンを食べたが、思わず笑顔がこぼれる味だった。

また、おいしいだけにとどまらず、ロカボにはしっかりとしたエビデンスが存在するのも特徴だ。海外での研究はもちろん、国内で日本人を対象にした減量効果や血糖改善効果を証明する研究もある。薬物治療を受けていた糖尿病患者の薬の量が減った、というデータもある。

コミュニケーションツールとしての食事

小沢朋子氏は、ケータリングやメニュー開発を手掛けるフードデザイナーとして、「食と環境のデザイン」について語った。小沢氏は食に関わるデザイナーとして、「食べる」という行為は多面的なものであると指摘する。

例えば、単純に誰かと食事をしているとき「食べる」ことは、コミュニケーションツールのひとつとなるし、シェフなど作り手側からは表現手段となる。また、減量のためや食事療法の一環として機能面を強調したもの、流行を追いかけるためのトレンド、催事や儀式のための食事などもある。

これらの中から小沢氏がデザインの中心と考えているのが、コミュニケーションツールとしての役割であり、他者とのコミュニケーションを促すきっかけになるような食事を、デザインによって表現するという。

小沢氏が手掛けたウェディングや、企業の発表会での事例などが紹介されたが、記者が面白いと感じたのは、2013年に開催された「みんなのスーパーマーケット」という展覧会のレセプション用のケータリングだ。

「展示されているものの中には食品もあり、つい食べたくなるのですが、展示は食べるわけにはいきません。そこで、レセプションでスーパーの商品を食べるような感覚を提供できればと考えました」(小沢氏)

スーパーマーケットをイメージさせるために、食事を透明な惣菜用パッケージに入れ、値札やバーコードまで用意。料理の品数が少なくなると半額シールを貼りつけるという凝りようだ。見ているだけでも楽しいし、レセプションのコンセプトも一目瞭然。

改めて「食べる」ことが、我々に与える影響の多用さ、大きさを考えさせてくれる内容だった。

医師・専門家が監修「Aging Style」