健康状態といえば「健康か、病気か」の二択、というのが一般的な認識だが、どちらとも言い切れない状態、「未病」という概念が近年提唱されている。健康とも病気とも言い切れない状態とは、一体どのような状態なのだろうか。

未病への理解を深めるため、2016年9月14日に開催された、「腸内環境」の視点から未病に迫るシンポジウム、「腸内環境から未病を考える」を取材した。

主体的に健康づくりに取り組むための概念

シンポジウムで「未病」について解説したのは、提唱者のひとりで前内閣官房参与、日本健康生活推進協会理事長である大谷泰夫氏だ。大谷氏は、未病とは単に体の状態を示すだけではなく、「生き方が変わる考え方」につながるものだと語った。

つまり、「健康診断の結果が悪化しないよう、生活習慣を改善しよう」「病気の回復後、また発症することがないよう注意しよう」「加齢によって足腰が衰えすぎないよう運動をしよう」といったように、自分が健康と病気の両極どちらかではなく、その中間にあることを意識するための動機付けのようなものだ。

「未病の状態を意識して、自分の生き方を誰かに決めてもらう受け手としてではなく、自ら判断し、最適な健康サービスや医療情報を選ぶための考え方なのです」(大谷氏)

大谷氏の講演後、最新の腸内環境の知見から未病を読み解いたのは、東京大学医学研究所教授で、粘膜免疫学の専門家でもある清野宏氏だ。腸内環境は食生活と密接な関係があることが近年の研究で明らかになっている。つまり、特別な治療に頼ることなく、未病の段階で問題を解決、改善しやすい部分であるともいえる。

清野氏は、腸は消化器官であると同時に免疫器官であり、普段の健康状態を大きく左右する、鍵になる器官だと語った。

「腸は皮膚よりも広く大きい器官であり、その粘膜には無数の免疫細胞がつまっています。さらに、リンパ組織が存在しており、人体でも最大規模の免疫器官だと言えるでしょう」(清野氏)

鍵を握るのは腸内細菌

そんな巨大免疫器官である腸だが、実は腸内細菌によって発達しており、無菌状態ではほとんど発達しないことがマウス実験で確認されているという。

例えば、善玉菌としてよく知られているビフィズス菌は腸内粘膜に取り込まれると、免疫機能を活性化することが確認されている。清野氏は、インフルエンザシーズンに高齢者を対象とした比較実験で、ビフィズス菌を摂取した高齢者は、感染や発熱が抑制されたという研究結果を例に挙げ、「未病の状態から有用菌、善玉菌優勢な腸内環境を作ることで、健康につながる可能性は十分にある」と指摘した。

腸内環境は個々人で異なるため、自分の腸内環境を何らかの形で把握し、自分に合った方法で改善していく、というまさに未病からのアプローチが重要になる。

清野氏は、今のところゲノム解析による腸内環境解析が主流だが、糞便から解析するスマートトイレや、唾液、運動データなどからの解析方法も研究が進んでいるとし、「将来的にはビッグデータを活用し、その人にあった善玉菌を含む乳製品の提案といったことも実現するのではないか」と語った。

医師・専門家が監修「Aging Style」