小泉今日子さんが「アンチエイジング大嫌い」と言ったか言わないかで、物議を醸しているようだ。

話題のもとは、ある雑誌の対談の中で、上野千鶴子さんと交わされた一言だが、よく読めば「アンチエイジングという言葉」が嫌いと言っている。

それなら僕もうなずける。

そもそも我々が十数年前に日本抗加齢医学会を立ち上げた時から、抗加齢という名称は論議の的となってきた。

加齢は自然現象で、それに抗うのはいかがなものか、という議論である。それに対し、我々は決して抗うのではなく、加齢とそれに伴う老化にいかに折り合いをつけるか、つまりは健康長寿を訴求するにすぎないとお答えしてきた。

一つには、それに代わるいい言葉が見つからないからである。

「サクセスフルエイジング」、「スローエイジング」などいろいろ提案はあったが、いまひとつしっくりこない。ま、名前はともかく中身さえ理解していただければ、もうアンチエイジングという言葉も定着してしまったし、というのが我々の現在の考えである。

ちなみに僕が関わっている医療団体では、「ウェルエイジング」という言葉を使い、黒岩神奈川県知事は「未病」というコンセプトを打ち出されている。

問題は中身にある。

ホルモン補充療法や抗酸化療法を行う内科的対策で始まったアンチエイジングだが、最近ではシワしみたるみ対策の美容医療が主流になりつつある。

少なくとも女性の間では、「アンチエイジング」イコール「見た目の若返り」の感がないでもない。そこで学会でも分科会として「見た目のアンチエイジング研究会」を10年前に立ち上げ、このジャンルを学問的に育てようとしている。

それに対しての批判は、「形より心」。見た目にこだわるのはけしからん、というご意見である。シワ、シミ、たるみ対策など、所詮は板金塗装。もっと目を内面に向けよという主張である。

だが我々の考えは違う。

建前はどうあれ、「見た目」にこだわるのは人の性(さが)。「見た目」は「身だしなみ」にもつながる。ある種の精神病の初期症状は、「身だしなみ」にこだわらなくなることから始まるとさえ言われている。つまり見た目に対する常識的な配慮は人として必要な「気配り」とも言える。

もちろん、アンチエイジングの目的は全身の若返りにある。それは何も特別なことでなく、適度な運動とバランスのとれた食事が基本である。それを医学的にサポートするのがアンチエイジング医学と考えている。

このことを前提とした上で我々の主張は、特に女性がこだわる「見た目」を入り口とし、実年齢よりも老けて見えるようであれば、自分の健康状態を見直して表面だけの板金塗装にとどまらず、全身のアンチエイジングにも目を向け、必要なら内科的な手法も取り入れる。

そして全身状態の改善をはかれば、それは当然「見た目」にも反映し「美しさ」にもつながることになるはず。

それをインセンティブとして、またさらに内面の若返りをめざす、というプラスのサイクルを生み出したいというのが僕の主張である。

小泉今日子さん、それでもアンチエイジングには反対ですか?

[執筆/塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

(Aging Style)