ゴージャスなカップルがコンバーチブルのシトロエンに乗って南仏の道を疾走し、海辺のカフェにやってくる。

白髪のカフェ店主に「日常から離れたくて」ニューヨークから来たと告げるローランドは作家で、妻ヴァネッサは元ダンサーだ。「アイ・ラブ・ユー」と口にする夫婦だが、なぜか微妙な距離がある。美しいヴァネッサは能面のように無表情で、空虚な瞳から時々涙を流す。そして、そんな妻を見つめるローランドもまた苦痛を噛みしめているふうだ。二人の間に何があったのか?

『Mr.&Mrs.スミス』撮影中に恋に落ちたアンジェリーナ・ジョリー・ピットとブラッド・ピットが10年ぶりに再共演を果たし、しかも夫婦を演じた話題作『白い帽子の女』がついに日本上陸! ハリウッドで着実にキャリアを築きながら子供6人を育て、さらには社会貢献までこなすスーパー夫婦のコラボ作品は、大人のラブストーリー。設定もセリフもニュアンスたっぷりで、「フランス映画?」と思わせるテイストが印象に残る。先に公開されたアメリカでは男女間の微妙な機微が理解しがたかったのか「退屈」や「冗長」と悪口を言われたが、言動の裏側を読み解くのに慣れた日本人にとっては夫妻が交わす会話や視線、語られない言葉が実に雄弁だ。

アンジー監督は、亀裂の入った夫婦関係や、その原因となった女性心理や怒りを繊細にすくいあげる。これが監督第3弾となる彼女の成長は明らか。物語の深遠さはもちろん、計算された映像美やキャラクターの心理を表現する衣装や小道具の選び方からも、それが伝わってくる。特に目を惹くのがヴァネッサのファッションで、YSLのサングラスやさまざまなつば広帽、シルクのランジェリーにうっとり。アンジーが集めたジェーン・バーキンやブリジット・バルドーらの切り抜きを元に衣装デザイナーが作り上げた世界観はとてもシックだ。

問題を抱えた夫婦の物語と聞くと憂鬱に思えるが、演じるブランジェリーナ夫妻の深い愛情が伝わってくる佳作。恋人とではなく女友達と一緒に観て、理想の結婚や夫について話し合うのをお勧めします。

◇監督・脚本・出演/アンジェリーナ・ジョリー・ピット 出演/ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、メルヴィル・プポー、ニエル・アレストリュプほか 9月24日よりシネスイッチ銀座ほか全国公開。(C)2015 UNIVERSAL STUDIOS


※『anan』2016年9月28日号より。文・山縣みどり