意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ポピュリズム」です。

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「ポピュリズム」とは、エリート主義の支配層が、一般大衆の不安や願望を掻き立てる政策を訴え、熱狂状態にして主義主張の後押しをさせる政治手法のこと。大衆迎合主義、扇動主義ともいい、発展途上国の独裁政権によく見られました。最近、それが先進国でも目立つようになってきています。

顕著な例は、アメリカ大統領選挙に出馬中のドナルド・トランプ。「移民を排除し、強いアメリカを取り戻すのだ!」と、センセーショナルな発言を繰り返し、共和党の候補者に指名されるほどの支持を集めました。

また、イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票で離脱派が勝利したのも、ポピュリズムの結果です。離脱派のリーダーだったボリス・ジョンソンは、失業や格差などのイギリス国内の諸問題は、EUを離脱すれば解決できると主張。言葉通りに信じて「離脱」に多くの人が投票しましたが、実際には離脱によるデメリットもたくさんありました。ヒトラーがドイツ国民をナチズムに導いたのもポピュリズムです。

「成果がその偉大さを示す前に、群衆がその政策の理念を理解したことがかつて一度だってあるだろうか」と、ヒトラーは確信犯的な発言をしています。

つまり、目の前の欲望を満たす言葉に乗せられてしまう人が大勢いるということ。古代ローマの詩人、ユウェナリスはそれを「パンとサーカス」という言葉で表現しています。大衆には、パン(食料)とサーカス(娯楽)を与えて熱狂させれば、政治家はその間に好きに統治できると指摘したのです。1900年以上前から変わらず、人は流されやすい存在なんですね。

ポピュリズムに乗せられて、取り返しのつかない状況に追い込まれないために、聞こえのいい言葉、わかりやすいスローガンには注意が必要です。政治家は支持を得るために、巧みに言葉を操りますから、裏にどんな意図があるのか、見極める目を養いたいですね。

今の日本でいえば、「消費税増税先送り」を手放しで喜んでいいのか? 国の財源は変わらず足りないので、ツケを後に回すことになります。言葉の裏を想像し、論理的に考えることは生活の中でも大事なことかもしれません。

◇堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN


※『anan』2016年9月28日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子