最新の研究で徐々に明らかになりつつある、私たちのカラダの“常在菌”の世界。過度な殺菌や除菌ではなく、自分の菌を上手に育てながら“共生”すれば、カラダは自然と整います。

私たちのカラダに住み着く常在菌との本当に上手な付き合い方を、菌のプロフェッショナルたちに聞いてみました。

≪細菌の研究は、宇宙探索のように未開の分野ばかり。≫
長年、腸の菌コントロールを患者にガイドしてきた、腸のスペシャリスト・小林暁子先生をもってしても、まだまだ菌は宇宙のように分からないことだらけ。

「最近、クリニックでは内側のケアだけでなく、整体も取り入れることで、患者さんの腸の働きが改善していくのを実感しています。股関節など骨の歪みを直すと、腸内細菌のバランスも整うのです」

あらゆる体調不良の原因といわれる悪玉菌だけど、小林先生によれば、腸内細菌バランスが極端に悪い人はほとんどいないそう。

「菌のバランスは日々変わっていくものなので、食事や生活習慣などにちゃんと気を配れば、確実に成果は表れます」

また、心のケアにも腸のケアが強く関わってくる。

「精神安定に必須の脳内の神経伝達物質・セロトニンの大部分は腸で作られているので、腸は脳と並ぶ、全身の神経をコントロールする要ともいえます」

ただ、腸が様々な症状を生み出している事実はあっても、どの菌がどのように作用しているかは未だ分からないことのほうが多い。腸内は、日和見菌といわれるどっちつかずの菌が全体の7〜8割を占めているけれど、このポテンシャルがまだ解明されていないのだ。今後の研究次第では、驚きの事実が出てくる可能性も。

≪全身に生息する多様な細菌は、自分自身でもある。≫
口腔内、肌、腸と続いて、最後に訪ねたのが、女性にとって大切なデリケートゾーンのスペシャリスト・出井知子先生。デリケートゾーンや膣内に生息する常在菌たちと、もっと上手に付き合ってほしいと常々訴えてきた方だ。ここでも出てきたのが、肌のケア同様、洗いすぎのタブー。

「せっかく善玉菌が膣内を清潔に保とうとしているのに、綺麗にしなければという思い込みでゴシゴシ過剰に洗い、善玉菌のパワーを損ねてしまうことが多いんです。デリケートゾーンは表面をそっと撫でるように洗えばよく、ひだの中までゴシゴシと洗おうとするのはやりすぎです」

おりものに対する嫌悪感も問題、と出井先生。

「おりものは、膣内に入ってきた雑菌と白血球が戦った結果、体外に出てきた産物です。また、排卵期には精子がスムーズに子宮に到達できるよう、手助けをしてくれるものでもあります」

おりもの一つとってみても、雑菌から身を守るため、体内の様々な菌が働いてくれているのが分かる。私たちの全身に生息している菌。体調の変化や心の浮き沈みでも変わっていく、繊細かつ大胆な菌を何だか愛おしく感じてきた。

◇小林暁子先生 医学博士。「小林メディカルクリニック東京」院長。“健美腸”を軸に、内科や皮膚科などと連動させた総合的なアンチエイジング治療を展開。東洋医学にも精通。

◇出井知子先生 産婦人科医。「ともこレディースクリニック表参道」院長。分娩や手術の他、婦人科がん治療やホルモン療法など、臨床経験が豊富。些細な疑問にも親身に対応する。


※『anan』2016年9月28日号より。イラスト・吉田トキオ  文・板倉ミキコ