暮らしまわりのスタイリストとして活躍する伊藤まさこさんは、実は「さりげない気配りの達人」。その絶妙な“気配り”の秘訣、そして周囲の人からの、伊藤さんの「気配りエピソード」を紹介します。

*  *  *

18時からのオフの時間は、「友人たちとの食事を楽しむことが多い」と伊藤さん。アトリエにはよく友人が集まり、その楽しそうな様子は彼女のインスタグラムでも垣間見られる。

「人を招いたときに気をつけているのが、ゲストを緊張させないこと。我が家に到着したら、すぐに自由に過ごしてもらえるように工夫をしています」

例えば、グラスやカトラリーははじめから用意し、誰でもすぐ手にできる場所にセット。食事が始まれば、伊藤さんも一緒にテーブルについて、おしゃべりに興じる。ゲストがくつろげるように、丹念な準備をしているのだ。また、楽しかった様子はSNSにもアップ。

「多くの人が目にするものだから、言葉は選んでいます。アップする写真も、見て楽しい、おいしそうって思ってもらえるものだけと決めていますね」

とはいえ、耳に心地よいことばかりを並べて済ませているわけではない。言いにくいこともちゃんと伝えるようにしている。

「おかしいと思ったら、すぐその人に伝え、それで終わり。引きずりません。思ったことをいつ伝えるかも大切にします」

そんな伊藤さんのことを、料理家の坂田阿希子さんは「温かさのあるカジュアルな気配り名人」だと話します。

「とにかくフットワークが軽いんです。SNSで彼女が和菓子をアップしていたので“食べたい”とコメントしたら、すぐに差し入れてくれて(笑)。不思議なことに、彼女の行動からは、これは特別なことじゃないのという雰囲気を感じとれるから、お返ししなきゃと思わず、素直に受け取れるんです」

つい最近も料理の差し入れをもらったという坂田阿希子さん。伊藤さんには、男らしさと女らしさが共存しているとも話す。

「愛猫が亡くなってしばらく経ったとき、“娘と庭で摘んだから”という簡単な手紙と一緒にブーケを玄関のドアにかけてくれていたことがあって。その心遣いが本当に嬉しかったんです。悲しんでいた私と適度な距離を保つ男前な感じと、花や料理にこめられた女らしさと。そんなバランスがちょうどいい人なんです」

◇伊藤まさこさん 暮らしまわりのスタイリストとして活躍する傍ら、旅や食にまつわる本も出版。ほぼ日刊イトイ新聞のサイトでは、お弁当の連載も担当する。『ちびちび もぐもぐ お酒とごはん』(PHP研究所)は11月に発売。

◇坂田阿希子さん 料理家。「studio SPOON」主宰。雑誌や書籍で活躍しながら、料理教室も開催。著書『わたしの作りおき便利帖』が発売されたばかり。


※『anan』2016年10月5日号より。写真・馬場わかな スタイリスト・伊藤まさこ 取材、文・野村紀沙枝