2012年にシカゴで初上演され、翌年ブロードウェイに進出した大ヒットミュージカル『キンキーブーツ』。この夏の日本版では小池徹平さん、三浦春馬さんが主役を演じ、連日当日券を求め長蛇の列が。

そのアメリカ・カンパニーが来日し、まもなく開幕。8月にブロードウェイ版をいち早く観劇した、作家の林真理子さんとフリーアナウンサーの中井美穂さんが見どころや魅力について語り合いました。

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林:美穂ちゃんと私は、4月にもニューヨークまで、ミュージカル『王様と私』を観に行ったのよね。

中井:本場ブロードウェイで観る舞台は、街や劇場の雰囲気、そして作品自体も格別で、また行きたいですねと話していたところ……。

林:8月に再びニューヨークで『キンキーブーツ』を観ることになって。本当にいい作品だったわ。

中井:『キンキーブーツ』を上演しているアル・ハーシュフェルド劇場以外にも、ブロードウェイにはたくさんの劇場があって、そのひとつひとつが個性的。ミュージカルを観つつ、劇場の個性を楽しむというのが日本とは違いますね。

林:ブロードウェイって日本の温泉街みたいなの。泊まっている旅館は違うけど、わらわらと同じ通りに出てワイワイする感じ? あの高揚感があるから、観劇し終わった後も楽しいのよね。

中井:タイムズスクエアが近くて、終わってからも華やかな余韻が続きますね。出待ちしていると、けっこうスターにも会えるんですよ。

林:舞台好きの美穂ちゃんは、4月にNYに行ったときも『キンキーブーツ』を観ていたわよね。

中井:日本版で三浦春馬くんが主役のドラァグクイーン、ローラをやると聞き、その前に絶対観ておこうと思って。

林:それにしても初めて観て驚いたわ。ローラ役の人の脚の長さとダンスシーンの迫力! 私は、ローラの後ろで踊る、ドラァグクイーンのエンジェルスがとても好き。

中井:微妙にゴツくて、美人ではないのがおもしろいですよね。ストーリーもわかりやすい。NYでは、さすがに笑いのツボまでは聞き取れなかったけど。

林:日本公演では字幕が出るから大丈夫ね。

中井:上演中、客席も大笑いしたり、手拍子したり、ノリノリで楽しい。でも日本版のときも、普段おとなしい日本のお客さんがけっこうノッていましたね。やはりシンディ・ローパーが作った楽曲の魅力も大きいですよね。

林:あとね、出演者が決して若い人ばかりじゃないの。私みたいなくたびれた田舎のおばちゃんも出てくるわけですよ。靴の工場で働いている“ザ・おばちゃん”が、いざ歌って踊ると、ものすごく上手でいい味を出しているの。

中井:おじいちゃんもいい味出してましたよね。日本だと若いキャストが老け役をするじゃないですか? でもブロードウェイは役者の層が厚い。だからお客さんも「どこかに私がいる」と自分を投影できる役を見つけられるから、客席が置いてきぼりにならない。

林:あら、美穂ちゃん、いいこと言う。それとゲイというテーマを明るく取り上げていたのもいいね。

中井:ローラは“父親の期待に沿えない、女々しい男に育ってしまった自分”というコンプレックスを持ち、ゲイではないチャーリーも“親の工場を潰してしまうのか”と悩む。ローラがドラァグクイーンになって以来、疎遠になっていた父親と再会する老人ホームのシーンがすごく切なかった。

林:あそこ、良かったわ〜。ここに出てくるゲイの人たちは、立ち位置が認知され、周りの人とも一見うまくやっている。だけど父親には認めてもらえない。親と距離感がある。そんな切なさも現代的なテーマだなと思いました。うちの夫もこういう話をすると「けっ」と言うのよ。ゲイの方々は、そういう偏見と戦っているのよね。

◇はやし・まりこ 作家。『本の旅人』(KADOKAWA)に連載中の「西郷(せご)どん!」が、2018年のNHK大河ドラマに決定! 本誌連載をまとめた美女入門PART14『美を尽くして天命を待つ』も好評発売中。

◇なかい・みほ アナウンサー。『世界陸上』(TBS系)、『タカラヅカ カフェブレイク』(TOKYO MXテレビ)などに出演。また、演劇コラムの執筆なども行い、読売演劇大賞選考委員も務め
ている。

◇イギリス田舎町の老舗靴工場の息子チャーリーは、家業を継がずロンドンへ。その矢先、父親が亡くなり帰郷するも、工場の在庫処理のために再びロンドンを訪れる。そこで絡まれていた“女性”を助けようとして美しきドラァグクイーン、ローラと出会う。そして倒産寸前の工場を救う秘策として“女装の男性たちのブーツ”を作るというニッチなターゲットを思いつくチャーリー。ミラノの靴展示会を目指し、ローラに協力を仰ぐのだが……。10月5日(水)〜10月30日(日) 渋谷・東急シアターオーブ S席1万3000円、A席1万円、B席8000円(すべて税込み) Bunkamura TEL:03・3477・3244(10:00〜19:00) http://www.kinkyboots.jp/


※『anan』2016年10月12日号より。写真・天日恵美子 ヘア&メイク・面下伸一(林さん) 大島知佳(中井さん) インタビュー、文・今井 恵