意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国民投票」です

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国民投票とは、国の重要事項の決定に際し、国民の意見を投票を通して聞く制度のこと。日本で国民投票法が制定されたのは2007年、第一次安倍内閣時代。18歳以上の日本国民が国民投票の投票権を有します。

日本で国民投票が行われるのは、日本国憲法を改正する時だけです。衆議院・参議院それぞれで、総議員の3分の2以上の賛成を得たのち、国民投票で過半数の賛成を得られれば、改憲案は可決されます。改憲問題は、近年急に盛り上がっているように感じるかもしれませんが、憲法改正は自由民主党の結党当時からの悲願で、60年越しのプロジェクトなんですね。7月の参議院選挙で与党が多くの議席を取ったので、おそらく近い将来、私たちは国民投票を経験することになるでしょう。

国民投票は、イエスかノーかの2択になります。簡単に投票できてしまう危険もあるんですね。まさか通らないだろうと思いながら、軽い気持ちで入れて、予想外の結果になってしまったり。イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票がまさにそうでした。なので、慎重に投票する必要があります。

国民投票に関わる宣伝は、基本は国費ですが、通常の選挙と違って、有料の広告を出すことに規制がありません。なので、お金を持っている巨大政党がバンバン広告を出して強く主張すれば、世論が流される可能性もあります。

もう一つ問題なのは、日本の場合、「過半数の賛成」とは、投票率にかかわらず、投票総数の2分の1を超えればいいんですね。つまり、投票者数が少なければ、1票が重くなる。投票率が低いと、限られた人の手で決定がなされてしまうかもしれないんです。

海外では国民投票の最低投票率を決め、ある程度の投票率がないと有効にはならないラインを決めています。日本にはそれがないので、極端な話、投票率が20%でも決まってしまう。日本弁護士連合会は「日本にも最低投票率制度を取り入れるべきだ」と提言しています。憲法は法律と違い、国民が国家権力を縛るためのもの。改憲条文が上がってきたらしっかり考え、国民一人一人が決めるものだということを認識しておきましょう。

◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN


※『anan』2016年10月12日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子