卓球にかける少女たちの熱い青春を描いた、朝野やぐら原作のTVアニメ『灼熱の卓球娘』が10月3日よりスタートする。
中学女子卓球界では、全国大会で優勝し続けてきた強豪校 凰堂学園が予選リーグで無名校に敗退するという波乱が起きていた。王者を敗北させたその無名校が全国初優勝を手にしたことで、群雄割拠の覇権争いが幕を開けたのだった。
転校生の旋風こよりは市立雀が原中学校 卓球部に入部。ドライブ打法が強みで“ドライブ四天王”のひとりである上矢あがり、ムネムネ、後手キルカら卓球を愛する部員たちと出会い、共に戦っていく物語だ。

胸の高鳴りと熱が入り混じる新たな卓球アニメを制作するのは、『KURAU Phantom Memory』で監督・脚本を務めたほか、様々な作品で脚本、原画、演出などを手掛けてきた入江泰浩監督。見どころや放送前の意気込みを伺った。
[取材・構成:川俣綾加]

テレビアニメ『灼熱の卓球娘』
テレビ東京他にて、10月3日より放送開始

■ 卓球女子アニメのポイントは“メリハリ”

──まずお聞きしたいのは、原作コミックスを読んでの感想です。どんな印象を抱きましたか?

入江泰浩監督(以下、入江監督)
率直にいうと、これまで自分が読んできたマンガ、関わってきたアニメとは違うタイプの作品だと感じました。登場人物は全て女の子で、その子たちが高みを目指すべく熱く懸命に切磋琢磨している。でも、最初にアニメ化のお話をいただいた時は「他に適任者がいるのではないか」と思ったんですよ。

──なぜそう思ったのでしょうか?


入江監督
女の子たちがたくさん登場してちょっとフェティッシュな描写もある。そういう原作をアニメ化するのが得意な方は知り合いも含め、何人か頭に浮かぶんですよ。正直に言うとそういった方のほうが向いているのではないかと思って。でも、だからといって「なぜ自分に依頼がきたのか。他の方に頼んで」と考えたわけではありません。こよりたちのプレイヤーとしての個性や、区立もず山中学校のくるりが繰り出すカーブドライブで竜巻が起きるシーンは映像にしたら絶対に楽しいものになる。原作を読みながら、そういったイメージが次々とわいてきて、きっといいものにできると感じてたんです。

──卓球をアニメーションとして描くにあたり、苦労したことや工夫したことは何でしょうか。

入江監督
卓球は自分がピンポン球を打ってから相手が返してくるまで1秒もありません。中学生でも早いと0.5秒くらいかな。レスポンスがとても早いスポーツなんです。それをアニメでやろうと思ったら自然とテンポも上がるし、原画の数も増える。難易度は高いだろうと感じました。同時に、マンガがパースや作画のハッタリで読者を引きつける表現にしている部分をアニメに取り入れられるのではないかと。色々な選択肢がある中で、まずはそうした絵の面白さを取り込んでいこうと考えました。

──卓球の試合を見に行くなどの取材はしました?

入江監督
左利きの選手、カットが得意な選手などの試合の動画を探して見たり、九州で開催された卓球の全中選抜(全国中学校選抜卓球大会)に足を運んで生の試合を見たり。絵コンテを描いている時もそれらの映像を色々と見ています。

──そこで印象に変化はありましたか? 新たに発見したことがあれば教えてください。

入江監督
僕が思い描いていた卓球は、いわゆる温泉卓球だったんです。ところが選手たちがプレイする卓球はとても複雑で、ラケットの繊細な角度によって異なる軌道で打ち返したり、球の回転方法も色々とあったりして。世界卓球の試合中継では定点カメラを使って望遠で撮影するほかにも、迫力あるアングルでいい抜き方をしていることもあって絵コンテでも影響を受けました。

──先のオリンピックで卓球の試合中継を見ている時も、スピードの中に複雑な戦いがあると感じました。

入江監督
そうなんですよ。とにかく力任せに球を打ってポイントを獲得するだけの単純なスポーツではなく、前段階から色々と準備をして、あと何球で決めたいからこの打ち方で流れをこう持っていく……といった戦術がすごく重要なスポーツ。

──あのスピード感の中でその戦術を練っているなんて驚異的です。

入江監督
あれだけの速度なので、頭の中で色々と考えて揉むのではなく体に染みつかせていて、実際は条件反射みたいなものかもしれないですね。

──アニメではそういった部分がどう描かれているかも楽しみです。

入江監督
1秒もない瞬間を、そのままのスピードで描くカットを作りつつ、スローモーションも使って「次はどう返すか」とモノローグを入れるなど、現実とは違った形も盛り込んで描くことで、卓球の魅力を伝えられる作品になればと思っています。試合の中で何によってどう流れが変わって決着していくかが肝になる。卓球シーンのどこにポイントを置くかぜひ注目して欲しいですね。そして音も。

──音は、試合中の音?

入江監督
音楽、SEの両方とも。先ほどお話した全中選抜では、卓球テーブルの上で跳ねる球の音や体育館に響くスニーカーが擦れる音、スマッシュの瞬間の音など特徴的な音がいくつもありました。それをどう印象的に取り入れるかも工夫しています。1話はすでにダビングが終了していて、調整の段階でSEだけ流してみたらバトルアニメのような激しさでした。映像の盛り上がりと一緒に音も盛り上がるように作っています。

──最後に、読者にメッセージをお願いします。

入江監督
TVアニメ版『灼熱の卓球娘』は映像と音楽とキャストの相乗効果によって、ひとつのお話の中ですごくメリハリがきいた作品になっています。完成した映像を確認すると、そのメリハリがすごくいいバランスで。音も映像も驚きのあるアニメになっているのでぜひ楽しんでください。