2016年9月25日(日)に東京・秋葉原のUDXにて、アニメファンや業界志望者を対象にしたアニメ制作技術の総合イベント第2回「あにつく2016」が開催された。
冒頭を飾る「あにつく2016基調講演」では、『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』の監督を務めたTRIGGERの今石洋之、『HEROMAN』や『STAR DRIVER 輝きのタクト』、『ベイマックス』など国内外のさまざまな作品に参加してきたデザイナーのコヤマシゲトが登壇。アニメ・特撮研究家の氷川竜介を聞き手に、多様なトピックを横断しながら、デジタル作画と3DCGをめぐる現状と今後の展望が議論された。

導入には、2016年7月に公開された庵野秀明監督による実写映画『シン・ゴジラ』についての2人の印象が語られた。今石は、クリエイターが他人を気にせず「自分の好きにした」フィルムを迷いなく作った姿勢に、庵野監督の後輩として勇気づけられたとコメント。対してコヤマは、CGを単にリアルに合成するだけでなく、それができたうえで、着ぐるみやミニチュアのような特撮的な表現も含めて”画”を優先した思い切りのよさに庵野監督らしさを感じたと語り、今石も同意を示した。

『シン・ゴジラ』のCGの話につづき、アニメ制作におけるデジタル化の流れが振り返られた。今石がアニメ業界に入った当初はすべてアナログだったアニメ制作が、演出を手がけはじめた2000年前後に、仕上げと撮影のセクションが急速にデジタルへと転換、それによって作業効率が大きく向上した。
対してアニメーターやデザイナーはいまだ、業界全体がデジタルへと切り替わってはいないが、今石が最近、ペンタブレットによるデジタル作画での制作に挑戦したアニメーションPVがあるということで、その映像が上映された。制作には「TVPaint Animation」が用いられ、今石を含む3人のアニメーターが原画を担当。アニメーターそれぞれのタッチが前面に出た作画が特徴的なフィルムだ。今石によれば、TVPaintによるデジタル作画には、原画マンが使ったブラシを動画マンも共有することで動画の工程でも原画に近いタッチを再現でき、また閉じていないラフな描線でも彩色(仕上げ)が問題なく行えるところに大きな利点があるという。加えてその結果、これまでは欠かせなかった「原画トレス」の作業をスキップしてしまうことも可能になったという変化などが語られた。

デジタル作画につづき3DCGアニメに関しても議論が重ねられた。氷川が日本的なセルシェーディングによる3DCGについて話を振ると、コヤマは3DCGがセルアニメ的な表現を目指すだけである必要性もないのではないかと提案した。デジタルで制作するならばデジタルの良さを活かせばいい。特にセルアニメ的な輪郭線などは、ピクサーやディズニーなどの国際的な3DCGアニメの潮流や、幼少期からデジタルに慣れ親しんだ世代が台頭してくることによって、今後不要になってくる可能性もあるだろうと語った。

とはいえ、手描きには手描きの良さがあるとつけ加える。コヤマはピクサーなどの3DCGアニメの制作現場にも、絵が描けるスタッフがほとんどであり、土台となるコンセプトづくりや映像の調整をする段階では手描きでの作業も柔軟に採用されていることを指摘。『ブラック★ロックシューター』でCG特技監督を務めた今石も、3DCGアニメでも手描きアニメ同様、個々のアニメーターの技量が重要になることを強調した。実際、魅力的な3DCGキャラクターの動きのタイミングは、3DCGアニメーターによる手づけによって作られている場合が極めて多く、その意味でアニメーターが持つコンセプト力やイメージ力がもたらす重要性は高いままだ。

最後に、2人からデジタル作画や3DCGの今後の展望が語られた。コヤマは、リソースを割いてクオリティを高めることが必ずしも作品としてのおもしろさに直結するとは限らないことを指摘し、あえて「ショボさ」の魅力を提唱した。
今石は、知恵を絞ることが何よりも大事であると強調。デジタル化により表現できるものの幅は広がったが、重要なのは「何を伝えたいのか」ということであるのは変わらない。そのためにも、知恵を絞りイメージを広げることが今後より一層求められるだろうと語り、基調講演を締めくくった。