東映アニメーションが制作する『プリキュア』シリーズでは、2009年の『フレッシュプリキュア!』以降、EDにおけるダンスアニメーションに3DCGが採用されてきた。そして2016年2月より放送されている『魔法つかいプリキュア!』の後期EDでは、業界内でも初の事例となるゲームエンジン「Unity」の導入がなされている。
2016年9月25日に開催された「あにつく2016」2本目のセッションでは、「プリキュアEDにおけるUnity導入事例」と題して、東映アニメデジタル部から小林真理、松本八希、中谷純也の3人が登壇し、Unityを導入しての映像開発のノウハウや今後の課題などが語られた。

まずはじめに東映アニメーションのエンディングディレクターである小林真理から、「プリキュアEDのUnity導入について」をテーマに発表が行われた。
『プリキュア』シリーズのダンスEDにおいては、まず何より「視聴者が楽しめるダンスムービー」であることが目指されているが、それと同時に東映アニメーションデジタル部の技術的な挑戦と発信の場でもあるという狙いを表明。その点において、今回の『魔法つかいプリキュア!』EDでは、Unityの導入が挑戦であったという。

Unityとは、統合開発環境を内蔵するゲームエンジンで、モバイルゲーム開発などで幅広く使用されている。今回、東映アニメデジタル部はUnityが3DCGソフトとしてアニメ制作用途にも使えることに着目した。
小林は、Unityをアニメ制作で使用することの主なメリットとして、完成形をプレビューしながら作業を行えることで制作スケジュールを圧縮できる点、Image Effectという機能によりカラコレ(カラーコレクション)やフォーカス処理といったポストプロダクション作業をUnity上で行える点などが挙げられた。
他方で課題点として、Unityはあくまでゲーム制作のためのツールなため、東映におけるアニメ制作のワークフローとどのように対応させたらいいかという点や、本編のルックと合わせるためセルアニメ的な輪郭線を3DCGでどのように表現するかといった点などが挙げられた。
その後、ワークフローやスケジュール、Mayaとのレンダリング/キャプチャー時間の比較などを、具体的な映像やグラフを示しながら解説。最後に、Unityでの作業を通じた所感として、完成した映像を見ながらリアルタイムでシーン構築できる点にクリエイターとして魅力を感じたと語り、発表を締めくくった。

続いてはUnityシェーダー開発担当の松本八希が「シェーダー開発について」をテーマに発表。シェーダーとは、3DCGのキャラクターモデルに陰影や色彩をつけるプログラムのこと。Unityには標準のシェーダーが付属しているが、『魔法つかいプリキュア!』EDでは、日本的なセルルックの質感を表現するために、独自にシェーダーを書く必要があったという。そうして開発された「Hakkinen Shader」において、どのようにしてセルルックが実現されていったかをさまざまなサンプル画像とともに紹介した。
Unityを使用しての所感として、松本も小林同様、パラメータを変化させると即座に映像へと反映されるプレビューの利便性を強調。さらに今後の展望として、ゲームエンジンでの映像制作はそのリアルタイム性を活用し、なるべく手描きのテクスチャに依存せず、シェーダーによる計算の表現によってどれだけ斬新な画を出せるかという挑戦になってくるのではないかとの予測を示した。

最後の発表者であるUnityテクニカルディレクターの中谷純也は、「ワークフロー・パイプライン開発について」をテーマに、Unityのテクニカル面の解説を行った。Unity内ではモデリングやアニメーションを行うことは難しいため、Mayaとの連携が必要になる。そこでまずは、その際にファイル共有フォーマットであるAlembicを用いてデータを移行させる方法が紹介された。続いて、カット情報の管理に、プロジェクト管理ツール「SHOTGUN」を導入することによって、シーン構築作業でのカット情報取得を自動化させる手法が語られた。これにより、シーン構築作業の時間を1/20にまで短縮できたという。中谷は、「ツールによる自動化の偉大さを実感した」としみじみ語り、発表を締めくくった。
Unityの導入によって、アニメーションにおける3DCG表現が今後どのように発展していくのか、その可能性の一端が垣間見られるセッションとなった。
[深井孔]

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