死んだはずの人間と謎の異星人との死闘を描いた『GANTZ』。
累計発行部数2100万部、奥浩哉による大人気コミックはこれまでTVアニメ化、実写映画化と過去にいくつものメディア展開も果たされた。この中でシリーズ屈指の人気エピソードと言われながら、今まで映像化されなかったのが、「大阪編」だ。その「大阪編」がフル3DCGアニメーション作品『GANTZ:O』として10月14日より、いよいよ劇場公開を迎える。
総監督は『TIGER&BUNNY』のさとうけいいち。監督は『APPLESEED』でCGディレクターを務めた川村泰。脚本は『ストロベリーナイト』などの黒岩勉が担当する。
アニメ!アニメ!ではこの度、劇場公開を記念して原作者である奥浩哉と川村泰監督に話をうかがった。奥の口から語られる『GANTZ:O』への愛を、ぜひ。
[取材・構成:細川洋平]

『GANTZ:O』
2016年10月14日(金)全国公開
http://gantzo.jp/

■恋のようにずっと考えていた

ーー『GANTZ』のエピソードの中でも非常に人気の高い大阪編の映像化、その話を聞いたとき、川村監督はどう受け止めたのでしょうか。

川村
最初に「大阪編のパイロット映像を作る」という話がありまして、それは我々の中では「イコール映画を作る」という話に繋がるものだったんです。しかし『GANTZ』は好きでずっと読んでいて、「このボリュームを映画化するのは無理なんじゃないかな」と正直に思いました。本気でやるならバジェット(予算)も大きくなる、やれたら最高だけど、果たしてできるのかな、という疑問が最初に浮かんでしまいました。

ーー奥先生はいかがでしたか?


僕はまず最初にPVをもらったんですが、「このクオリティーでやってもらえるんだ!」とすごく驚いて、それからずっとそのことばかりを考えてしまって、妻にまで「このCG映画だけは絶対にやってほしい!」と話していました。もう、恋に近い感じでした(笑)。


ーー時系列としては、監督の方でまずPVを用意して、それを先生に見せたのですね。

川村
ええ、イチかバチかで先生にお見せしようということを企画のメンバーが話しているのを聞いていて、「僕はこんなに『GANTZ』を知っています!」「今ならこれぐらい描けます!」という思いを込めて、僕自身もまさに先生に出すラブレターのつもりで作ったんです。だから、今、先生に「恋をするように」と言っていただけたことはすごくうれしいです。

ーー先生はどの辺りに惹かれたのでしょうか。


クオリティーももちろん高いけど、大阪編の場面がそのまますばらしいCGで再現されていて、「全部このクオリティーでやれたら、本当に夢のようだ!」と。

ーー川村監督としては、ラブレターの思いがまさに届いたわけですね。

川村
いや通じましたね! デジタル・フロンティアのプロデューサーとも大喜びしました。でもハタと気づいたのが、「先生がOKしたということはいよいよ大変な制作現場がはじまる!」ということで(笑)。

■カメラワークの妙

ーーPVを作るにあたって、これは本編にも繋がることかと思いますが、どういうポイントに気をつけたのでしょうか。

川村
PVで派手な映像ばかりではなく、主人公・加藤の感情もセットで見てもらえるように、一本の映画にした時にドラマとバトルどちらもイメージしてもらえるように作りました。それから先生の漫画にある実写的なレンズ感ですね。そこはすごく気を遣っているんだなと思ったので、アニメチックな演出を完全になくしていきました。

ーー先生はレンズ感をやっぱりかなりこだわっていらっしゃるのですね。


僕の中では割と自然にやっています。そもそも僕の漫画はCGや写真を取り入れたものなので、画面作りの段階からレンズの画角やレンズの種類を決めて、と。それは僕にとっては普通のことですね。

ーーその感覚が映画にも活かされている。


そうなんです。しかも同じ場面なのに全然違うカメラワークだったりするのがすごくよかった。漫画はコマの中に全てを落とし込むため、使えるレンズが限定されることもあるんです。だけど映画はカメラが動くので、「あ、こういう見せ方するんだ!」という見せ方ができる。それがすごくカッコよくて映画的で、ワクワクしました。


ーー本編のカメラワークで印象的だったのが、冒頭のGANTZの部屋から大阪に転送されるシーンでした。加藤がガラス越しに見るカットです。ここは必見ですね。

川村
あれはやりたかったんですよ! 実写ではカメラが映り込んでしまうので、ガラス越しに自分の姿を映すというのは難しいと思うんですよ。それでCGなら! と思っていましたが、実際は苦労しました(笑)。でもあのシーンこそフルCGでないとできないと思っていたので、最初の頃に思いついたアイデアでした。

ーー制作中、先生が打ち合わせに参加したことはあったのでしょうか。


ないですね、全く。

川村
それこそ最初の方で銃やバイクを新しくデザインしていただく企画があったりした以外では、「モブをちゃんと表現してほしい」というオーダーをいただいたことでしょうか。先生の漫画はモブが演出上のキーになったりしているので、「なるほど」と思いながら一生懸命作りました。


ありがとうございます! モブの顔の方が加藤たちより現実世界に近いんですよね。

川村
制作スタッフから「GANTZ顔」っぽい人を選んで、スキャンさせてもらいました(笑)。実際奥先生の漫画でも主人公たちはカッコよくて、モブキャラは生々しいですよね。


そう、そのバランスは映画も同じでしたね。

(次ページ:「漫画家になってよかった、と思えた」)

■漫画家になってよかった、と思えた

ーー加藤たちや大阪チーム、メインキャラクターたちはフォトリアルでありつつ、アニメ的な華もあるという、非常に繊細な造形になっています。

川村
ここは悩みましたね。初期の頃はリアル目にグッと寄せてデザインしてみたんですけど、スタッフの意見は賛否両論でした。日本人をリアルなCGにすると目が小さくなりすぎてしまうんですよね。今回はキャラの魅力を研究するために、パフォーマンスキャプチャーを撮影し、テスト映像を作り試行錯誤しました。その後スタッフとテスト映像を見ながら議論して、ようやくGoになりました。じっくり慎重に進められたので、自信を持って「これなら行ける」と思えたのはとてもよかったです。


ーーキャラクターの演技を担当するのはスーツアクターさんと声優さんと二段階になっていたと思いますが、以前、別の取材で加藤役の小野大輔さんに話をうかがった時には「口パクを合わせるのにすごく苦労した」とおっしゃっていました。

川村
アクターさんの演技に合わせないといけなかったので、口パク合わせは大変だったと思います。収録も普段の倍、時間をかけていますし、声優さんには事前に相当練習して望んでいただいたようで。だから本当にピッタリ合っていて命を吹き込まれたようで感動しました。

ーー映像だけではなく、アクターさんや声優さんの渾身の演技も加わって、非常に胸に迫るものがありました。さらに中盤にある『パシフィック・リム』さながらのバトルも大迫力で。

川村
実際は『パシフィック・リム』の何年も前に先生がやっていますからね。先生の漫画にはそういうものがいっぱいあるんですよ。


ははは(笑)。


ーーこれだけの作品をご覧になって、奥先生のご感想を聞かせていただけますか。


そうですね、この企画は何年も「作ってくれ!」と願い続けてきたものなので、達成感がすごくありました。「こんなにすごい映画を作ってもらえた漫画家は僕だけだ」って。漫画家になってよかった。そう思えるくらい誇りです。僕の宝物です。

ーーありがとうございます。それでは最後に、映画公開を楽しみにしているみなさんへ、メッセージをお願いします。

川村
僕も『GANTZ』のファンなので、なんとしてでもガンツっぽさを徹底的に表現しようという決意で挑みました。一方で誰が観ても楽しめるエンタメ映画にしようと毎日毎日、朝から晩まで考えに考えて仕上げていきました。フルCGならではの映像美、軽快なテンポのストーリーとヘビーなアクションの連続です。そしてさらに、キャラクターも豪華キャスト陣によって命を吹き込まれ、最後はちょっと泣けたりしますので、ぜひ、見ていただきたいです!奥 この作品は原作ファンが「こんなのを見たかった」というものになっていると思います。ファンの方も、そうじゃない方にとっても、たぶん初めて見るような映像の連続で、相当楽しめると思うので、ぜひ、見に来てください!