◆ ナ・リーグ首位打者争いが熾烈!

 シーズンも佳境を迎えたアメリカ・メジャーリーグ。各地区でポストシーズン進出をめぐる熱い戦いが続いているが、この時期になってくると個人タイトル争いにも注目が集まっている。

 ナ・リーグの首位打者争いは特に凄まじく、DJ・ルメーヒュー(ロッキーズ)とダニエル・マーフィー(ナショナルズ)の両二塁手が抜きつ抜かれつのデッドヒートを展開。現地時間19日終了時点で、その差は1厘だけだ。

 2人の打数と安打を比べると、ルメーヒューが527打数184安打、マーフィーは529打数184安打。もしルメーヒューが次の2打席を凡退で終えると、全く同じ数字が並ぶことになる。


【ナ・リーグ個人打撃成績】
1位 .349 ルメーヒュー(ロッキーズ)
2位 .348 マーフィー(ナショナルズ)


◆ 日本では2度も...?

 実は、メジャーリーグの長い歴史の中で「同率首位打者」というのは一度も生まれていない。

 打者なら本塁打や打点、投手なら勝利、奪三振などは数を「1」単位で積み重ねていくため、同数(タイ)は生まれやすい。一方で打率や防御率が同率になり難いのは野球ファンなら想像できるだろう(ちなみにメジャーでは最優秀防御率の同率1位も一度もない)。

 プロ野球に目を向けると、過去に2度の「同率首位打者」が誕生している。1969年のパ・リーグでは張本勲(東映)と永淵洋三(近鉄)が.333で、1987年のセ・リーグでは篠塚利夫(巨人)と正田耕三(広島)が同じく.333で同時に首位打者を獲得した。

 注目は「.333」という値だが、打数が3の倍数の時に発生し得るため、最も同率になり易い数値であることは間違いないだろう。それでも、メジャーでも誕生していないような記録が日本では2度も生まれていることは驚きだ。

 ちなみに、1987年のセ・リーグ首位打者争いで3位に終わった落合博満(中日)は、チーム最終戦で5打数1安打に終わった。もしこれが5打数2安打で終えていれば、落合の打率も.333となって3人が並んでいたことになる。


◆ 語り継がれるような名勝負に期待

 振り返ってみると、1950年以降のプロ野球で3人が同時に主要タイトルを獲得したケースはいくつかある。

 1995年のパ・リーグ打点王争いもそうで、1980年代〜90年代にかけての最多勝争いは、両リーグで3人同時に最多勝獲得というケースが何度かあった。しかし、4人以上となるとこれまで一度もない。

 1980年のセ・リーグ最多勝争いも、興味深いものだった。結果的に江川卓(巨人)が16勝を挙げて単独で最多勝を獲得したが、もしチーム最終戦で江川が勝利投手になっていなければ、江川を含む6投手が最多勝に輝いていたという大激戦だった。

 個人タイトル争いをめぐっては、時に敬遠合戦が生まれるなど“論争”になることも少なくない。それでも選手によっては記録ブックに名前が残る唯一のチャンスという場合もあるだろう。

 今年は個人タイトルをめぐって、日米でどのようなドラマが生まれるのだろうか...。できることなら後世に語りづけるような美しいストーリーの誕生に期待したい。


文=八木遊(やぎ・ゆう)