◆ 高いミート力を武器に一軍定着

 大ベテランの新井貴浩から、菊池涼介、丸佳浩、田中広輔らの中堅、そして若手の鈴木誠也に至るまで、各世代の主力が軒並み絶好調だった今季の広島。

 中堅〜若手がきっちりと成長した姿を見せ、今後の黄金時代到来を予感させる強さを見せたが、その中でブレイクの兆しを感じさせる楽しみなルーキーが現れた。ドラフト5位の内野手・西川龍馬である。

 大阪府出身の21歳。北陸屈指の強豪・敦賀気比高では1年秋から遊撃手のレギュラーを奪取。2年秋からは主将を務め、県大会、北信越大会で優勝。チームをセンバツ出場へと導いた。

 高校卒業後は社会人・王子に入団し、1年目から公式戦に出場。3年目には3番・遊撃手のレギュラーに定着し、日本代表メンバーとして第27回BFAアジア選手権にも出場を果たしている。


◆ 一軍に残り続けた男

 ドラフト時には、スカウトから「三拍子そろった東出輝裕(元広島)タイプ」と、同じく敦賀気比出身の先輩になぞらえて評価された男。パワーでは劣るものの、高いミート力と堅実な守備力に、50メートル6.0秒という走力を兼ね備えている。

 ただし、バランスは取れているものの、プロのなかで生き残っていくには“武器”が欲しいところ。どこか突出した能力でアピールしたいのも事実だ。

 そういう意味では、光るものを感じさせるのが“ミート力”である。オープン戦では全16試合に出場し、打率.389をマーク。見事に開幕一軍を勝ち取ると、出場機会こそ少ないながらもシーズンの多くを一軍に滞在した。


◆ 鈴木誠也に「天才」と言わしめる打撃センス

 ところが、西川はその少ないチャンスをきっちりモノにしている。

 ここまでのスタメン出場はわずか3試合。ほとんどが代打や代走、守備固めでの出場だ。にもかかわらず、打撃成績は51打数15安打で打率.294をマーク。代打に限れば、打率.320と数字はさらに跳ね上がる。1年目から代打というプレッシャーのかかる役割をきっちりと果たしていると見ていい。

 その高いミート力は同僚からもお墨付きを得ており、今季大ブレイクを果たした“同い年の先輩”鈴木誠也をして「天才」と言わしめた。


◆ 盤石の内野陣を崩せるか...

 チームは9月10日に巨人を下し、悲願のリーグ優勝を果たした。

 クライマックスシリーズや日本シリーズを見越して主力を休ませることもあるのが通例だが、今年は新井や菊池が個人タイトル争いをしていることもあり、なかなかチャンスが巡ってこないというのが実情。プロ1年目に優勝という最高の経験ができたのは大きな財産となるが、本人のなかでは少なからず悔しさもあるだろう。

 西川の本職である遊撃手には、今シーズン大きく成績を伸ばし、不動の先頭打者としてフルイニング出場を続けている田中がいる。遊撃に限らず、気力・体力ともに充実している内野陣に割って入るのはそう簡単なことではない。

 とはいえ、西川が田中らを脅かすような働きを見せられれば、チームにとっては願ってもいない最高の状況となるだろう。

 ソフトバンクの例を見るまでもなく、選手層の厚さは常勝軍団の必須条件だ。今季の喜びと悔しさを糧に飛躍できるか、今後の西川に注目したい。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)