◆ 赤ヘルの系譜 〜8番打者編〜

 四半世紀ぶりに訪れた歓喜に、広島の街が真っ赤に燃えた。

 高く厚い壁を乗り越えた今だからこそ振り返りたい25年前の記憶...。あの時の広島と今の広島を比較していくこの企画。今日は“8番打者”を見ていこう。


◆ 鯉の頭脳

 今から25年前、広島の8番に座っていたのは達川光男。プロ14年目・36歳のベテラン捕手であった。

 打率は.237、1本塁打とバットでの貢献度は高くなかったが、それはこの年に限ったことではない。

 実働15年で打率.250を超えたのは5回だけ。3割や2ケタ本塁打を打った経験はない。それでも長きに渡って扇の要を務められたのは、“捕手”としての能力の高さにほかならない。

 打者を惑わす「ささやき戦術」はこの人の専売特許とも言えるだろう。独特の広島弁で打者の心理を揺さぶり、投手をリードして行く。それもただ適当にしゃべっているわけではない。相手を分析する観察眼の賜物だった。

 その他にも、珍プレーでお馴染みとなった「疑惑のデッドボール」や「コンタクト紛失事件」などなど、話題には事欠かない。それでも当時投手王国を築いていた投手陣からの信頼は厚く、強かったチームの中で欠かせない存在として君臨していた。


◆ チームに安心感を与える扇の要

 さて、あれから25年。今年も8番打者は捕手が入ることが多かった。近年は世代交代の流れが来つつあったものの、今シーズンに関しては石原慶幸が勝っていたと言っていいだろう。

 今年で15年目・37歳のベテラン。こちらも打率.200で本塁打なし、17打点とレギュラーとしては物足りない数字となっているが、投手陣からの信頼は誰よりも厚い。
 
 ここ数年は会沢翼の台頭などもあって苦しいシーズンが続いていたが、蓄積された経験と読みで若き投手たちを牽引。まさにグラウンド上の監督としてチームに安心感を与える存在であった。

 ファンの間でも、石原が「陰のMVPだ」という声は少なくない。若手の活躍に目が行きがちな今シーズンだが、こうした縁の下を支えるベテランの活躍も見過ごすわけにはいかない。


【8番打者・比較】
▼ 達川光男
・ポジション:捕手
・投打:右投右打
・実働:15年
[1991年] 120試 率.237(359−85) 本1 点39 盗3
[通算成績] 1334試 率.246(3636−895) 本51 点358 盗17


▼ 石原慶幸
・ポジション:捕手
・投打:右投右打
・実働15年
[2016年] 105試 率.200(240−48) 本0 点17 盗4
[通算成績] 1449試 率.239(4028−963) 本63 点354 盗24

※成績は9月26日時点