◆ ヤクルト・村中は背番号「43」で挑んだ今季

 プロ野球ではこの時期、引退試合を用意され、花道を飾る選手と戦力外通告を受け、球界を去る選手、そして来季の契約を勝ち取る選手、その3つに分かれる。かつてはチームに欠かせない存在だったとしても、一つのケガや不振、不調がきっかけで、数年後に戦力外を通告されることも珍しくない。むしろプロの世界ではそれが当たり前のことでもある。

 複数年契約を結んでいない限り、プロ野球選手は一年一年が勝負。その勝負の世界で、今季崖っぷちから復活を果たした2人を紹介したい。

 村中恭兵は2005年の高校生ドラフトでヤクルトに1巡目指名され、08年に6勝を挙げ頭角を現すと、10年と12年に2ケタ勝利をマーク。燕のローテーションには欠かせない存在となった。しかし13年途中に調子を崩し、5勝、防御率5.00に終わると、14年は腰や肩のケガに苦しみ僅か7試合の登板に終わる。そして昨年は、チームがリーグ優勝を飾る中、村中は腰痛などもあり、8年ぶりに一軍登板なくシーズンを終える。

 オフには背番号は「15」から「43」に、年俸も40%ダウンという屈辱を味わい、まさに正念場の一年を迎えたのだ。村中は、開幕直後に一軍に昇格すると、中継ぎとして見事に復活。貴重な左投げリリーバーとして52試合(うち先発2試合)に登板し、7勝3敗、防御率3.90、6ホールドを記録した。6月には、2年ぶりに先発登板を果たすと、広島の連勝を「11」で止める快投も見せ、来季以降、先発投手としての完全復活へ足掛かりもつかんだ。

◆ 上本は代打の切り札で復活

 西武の上本達之は捕手というポジションながらケガとはほぼ無縁だ。2010年に自己最多の91試合に出場したが、規定打席はもちろん年間100打席を超えたことも3度しかない。同じ捕手に侍ジャパンメンバーでもある炭谷銀仁朗、さらに期待の若武者・森友哉がいて、競争は激しい。

 ここ数年は出場機会が急激に減り、13年から15年の3年間は42、18、6と出場試合はついに1ケタにまで陥った。しかし今季は、オープン戦で11打数4安打と結果を残すと、4月を終えた時点で打率.375と打撃好調。代打での起用がメインながら、マスクをかぶる機会も少なくなかった。そんな状況下で、打率は自身初の3割超え(.307)。得点圏打率は.333と勝負強さも見せつけた。

 ケガや不振から脱却を果たし、左の中継ぎ、そして代打の切り札として、今やチームに欠かせない存在にまで再び上り詰めた2人。1年前の今頃は、プロ野球人生の岐路に立たされていたが、そんな崖っぷちの状況からの復活劇は見事だった。

 このオフも多くの選手が球界を去る。しかし生き残ることさえできれば、復活のチャンスは必ずやってくる。2016年、村中と上本はそれを体現してみせた。

文=八木遊(やぎ・ゆう)