◆ 3試合連続でハイクオリティ・スタートを記録

 楽天・安楽智大が進化した姿を披露している。10月1日のオリックス戦に先発し8回5安打1失点の快投で、今季3勝目を手にした。9月18日の西武戦以降の直近3試合は、8回1失点、7回無失点、8回1失点と、いずれも7回2自責点以下に抑えるハイクオリティ・スタートを記録。シーズン序盤と比べて格段に安定感を増している。

 安楽といえば、済美高2年時に最速157キロを記録したことで話題になり、本来はストレートを持ち味にする投手だ。同年、夏の甲子園では史上最速の155キロを記録している。ただ、高校2年秋に右肘を負傷して以降、球速は低下していた。昨季、一軍登板での最速は自己最速から10キロ以上も遅い146キロである。

 ただ、今季はその球速が戻りつつある。今季の最速は151キロ。しかも、ただ球速が戻っただけではない。ケガとプロの壁に苦しんだ経験が安楽の投球スタイルを進化させた。高校時代のようにストレートでねじ伏せるのではなく、変化球を効果的に交えた投球スタイルを見せているのだ。

 昨季は1試合6回の登板にとどまったために一概に比較はできないが、昨季の球種別の配球ではストレートが実に8割近くを占めていた。ところが、今季はストレートが6割弱にまで減り、スライダー、カーブ、フォークといった変化球の割合が増加。また、同じストレートでも、球速ではなくコーナーを突くコントロールを重視しているようにも窺える。


◆ ケガをした高校時代からの取り組みが結実

 1日のオリックス戦でも、その新たなスタイルが見て取れた。7回、伊藤光に対して投じた4球目は外角低めいっぱいにズバリ。伊藤は全く手を出せず、見逃し三振に倒れた。ただ、そのストレートの球速は141キロ。豪腕・安楽ではない、コントロールとキレを重視する変貌した姿を印象づける1球だった。ケガをした高校時代から取り組んできた新たな投球スタイルが実を結びつつある。150キロでもキレがなくコントロールが甘ければ打たれる。しかし、140キロでもキレとコントロールがしっかりしていれば打たれない。それが野球なのである。

 自信を持って投げ込むことができる勝負球にこだわり磨くことで大成する選手もいれば、そのこだわりが成長を邪魔することもある。今季、変化球の使い方を変化させた菊池雄星(西武)のように、勝負球へのこだわりを捨てて違ったスタイルを手に入れることで飛躍への道が開けるケースもあるだろう。

 甲子園を沸かせた剛球は影を潜めるかもしれないが、3年目を迎える来季に向けて、新・安楽に期待が膨らむ投球であった。

※数字は2016年10月2日終了時点

文=清家茂樹(せいけ・しげき)