◆ 驚愕の15球

 球場の大歓声に応えるように、男はマウンド上で躍動した。

 7−4と3点リードで迎えたCS・ファイナルステージ第5戦の9回。勝てば日本シリーズ進出が決まる大事なマウンドに、この日「3番・指名打者」で出場していた背番号11が登った。

 これ以上ない大歓声に包まれて登場した男は、先頭の松田宣浩に対する3球目で自己最速タイとなる164キロをマークすると、最後は145キロのスライダーで空振り三振。

 先頭を斬って勢いに乗った大谷は続く吉村への初球、低めへの速球は165キロを計測。大型ビジョンに最速更新を知らせる表示が流れると、球場は試合が終わったかのような大盛り上がりとなった。

 吉村も打ち取って二死。日本シリーズまであと一人とし、打者は本多雄一。初球で164キロをマークすると、2球目はなんと151キロのフォークで空振り。2球でかんたんに追い込むと、ファウルとなった3球目にまたも165キロを計測。続く163キロはファウルとなり、148キロのフォークは見極められてボールに。

 カウント2ボール・1ストライクから決めに行った6球目、渾身の速球はこの日3度目となる165キロ。これもかろうじてカットされるが、それでも最後は149キロのフォークで遊ゴロに打ち取り、チームに日本シリーズ出場権をもたらした。


◆ 昨年の最速を3キロも更新

 昨年までの最速は「162キロ」だった大谷。それが今シーズン中に1キロずつ記録を塗り替えていき、最終的には「165キロ」に到達した。

【大谷と球速】
165km/h 10月16日 vs.ソフトバンク(札幌ドーム)
164km/h 9月13日 vs.オリックス(札幌ドーム)
163km/h 6月5日 vs.巨人(東京ドーム)


 今回の165キロに関しては、1イニング限定だったことに加え、勝てばしばらく間隔が空くことも追い風となったに違いない。

 普段は先発として“1/143”の中で記録してきたものが、昨日に関しては“1/1”の中のさらに1イニングに全力を注ぐことができた。そう考えると、最速をマークしてもなんら驚きはない。


◆ “人類最速”も夢ではない...?

 大谷のニュースはすぐに海を渡った。

 背番号11の先輩であり、大谷の“師匠”とも言えるダルビッシュ有は、自身のTwitterで「大谷は1年でMAXを3km/h更新したんですよね? このオフにまた次の段階のトレーニングを出来れば来年は168km/hかぁ(笑)」とコメント。その潜在能力の高さに更なる期待を寄せた。


 天井知らずで成長を見せる大谷であるが、今シーズンのメジャーリーグで大谷を超えるスピードを記録した投手というのは、一体どのくらいいるのだろうか。

 MLB公式サイト『MLB.com』にまとめられている「FASTEST PITCHES」を見てみると、今シーズン記録された球速の上位がずらっと並んでいる。そこで165キロ以上のスピードを計測した投手を探してみると、以下の選手が浮かび上がった。

【今季165キロ以上を記録した投手】
169.1km/h アロルディス・チャプマン(カブス) 7月16日
167.0km/h マウリシオ・カブレラ(ブレーブス) 7月18日


 1位はお分かりの方も多かったかもしれません。メジャー最速守護神こと、カブスのアロルディス・チャップマン。今季の最速はなんと169.1キロ。異次元の数字である。

 そのチャプマンに次ぐのがブレーブスの23歳右腕マウリシオ・カブレラで、今季の最速は167キロとなっている。

 今年大谷より速いボールを投げたのは、メジャーでもこの2人だけ。ダルビッシュのコメントにあったように、これからさらにスピードを上げていけば、いつの日か“人類最速”も夢ではない。

 進化が止まらない日本球界の至宝の今後から、目が離せない。