◆ ドラフト会議は20日!

 いよいよ明日、10月20日に開催されるドラフト会議。選手・球団のその後を大きく左右する“運命の一日”がいよいよ近づいてきた。

 ドラフトが近づくにつれて、当事者である「指名を待つ側」のドラフト候補生たちへの注目度はどんどんと増していく。その一方で気になるのが、彼らを「受け入れる側」である現役のプロ選手たちの気持ちである。

 どんな選手が入ってくるのかによっては、自らの運命も変わる可能性がある。完全に他人事というわけにはいかないだろう。彼らは“運命の一日”をどのように見ているのだろうか...。

 というわけで、今回も元ヤクルト、日本ハムでプレーしたかつてのドラ1右腕・増渕竜義氏に「プロ入り後のドラフトをどう見ていたか」を聞いてみた。


◆ 『ドラフトは気になる?』

 おそらくですが、中継を生放送で食い入るように見ている選手はいないと思います。

 まだ戦いが続いているチームにとっては、この時期はまさに勝負時。他の人のことなんかは気にしていられません。

 ただし、気になるのは事実。「自分のチームが誰を獲得したのか」ということは選手同士で話したり、速報を見たりはしていましたね。

 今年のドラフトでいえば、創価大の田中(正義)投手の交渉権をどの球団が獲得するのか。ファンの皆さんと同じく、みんな注目してると思います。


◆ 『正直なところ、どんな思いで見てる?』

 気にしている一方で、選手たちが内心どう思っているのかというと、実は“複雑な思い”なんです。

 では、この田中投手を例にとってみましょう。もちろん、これだけ騒がれている選手ですから、自分のチームに来てくれれば大きな戦力になると思いますし、観客動員も増えるかもしれないといった期待感はあります。

 しかし、正直「来ないでくれ...」という大人げない気持ちで見る選手がいるというのも事実でしょう。彼が来れば投手枠がひとつ減ることになりますし、単純にライバルが1人増えるわけです。

 情けないような話ですが、今年の現役選手たち、特に投手はいま複雑な思いを抱いているのかもしれません。現役選手にも様々な立場があるので、一概には言えませんが。


 実は、私のプロ2年目がまさしくその思いでした。

 当時ヤクルトが指名したのは由規。競合になった時、正直なところ私は「当たらないでくれ」と思っていました(笑)

 理由は、やはり同じ投手ということと、甲子園で投げている姿を見てすごい選手だと思っていたということ。あのスピードに、あのスライダー。彼が同僚になったら、「僕の地位も危ういのでは...」と思いました。

 なので、抽選でヤクルトが当たりを引いた時は、逆の意味で鳥肌が立ちましたね。


◆ 現役選手ならではの“複雑な心境”

 ただ、その後の記者会見。由規は家族への思いを涙ながらに語りました。“泣き虫王子”と呼ばれるキッカケとなったのがその時ですね。

 その由規の涙を見て、「すごくいい子だな」という印象を持ちました。心の中では焦りもありましたが、是非とも一緒にプレーしてみたいという気持ちが芽生えたもの事実です。

 その後、由規が入寮してきた時、普通なら向こうから先輩方へあいさつをしに来るのが普通ですが、私の方からあいさつに行ってしまいました(笑)

 やはり裏表のない良い子でしたし、今もとても仲良くさせてもらってますが、変わらず“良い子”です。

 
 指名を待つ子たちと、どうしても来て欲しい球団。あの子に来て欲しいと願うファン...。そのどれもあてはまらない、複雑な心境でドラフトを見つめるのが現役選手なのです。


▼ 増渕竜義・プロフィール

masubuchi

株式会社King Effect代表取締役。1988年5月3日生まれ、28歳。
同期に田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)がいる“88世代”。
埼玉の公立校・鷲宮高校で1年生からエースとして活躍。
3年時には最速147キロをマークしたが、甲子園出場経験はなし。
2006年の高校生ドラフトで西武とヤクルトから1位指名を受け、抽選の結果ヤクルトに入団。
2013年までの7年間で先発・中継ぎに活躍し、通算157試合に登板した。
2014年にはトレードで日本ハムへと移籍。2015年に現役を引退。