◆ 白球つれづれ〜番外編・ドラフトの醍醐味〜

 「末は博士か大臣か」。エリートたちが成功を夢見る将来像として古くから語られるフレーズだ。今や大臣がそれほど尊敬を集めているかは疑問だが、野球界に置き換えれば監督業がそれに当てはまる。何せ日本の中でNPB(日本野球機構)の監督と言えば12人だけ。社長よりも、大臣よりも希少価値はある。

 さて、選び抜かれた監督たちの入団時の評価はどんなものだったのだろう?

 来季から監督就任の決まっている中日・森繁和と西武・辻発彦を加え、外国人指揮官のA・ラミレスを除いた11人のドラフトを振り返ってみると興味深い。

 ドラフト1位が巨人・高橋由伸、ロッテ・伊東勤と前述の森の3人に対してそれ以外の8人は2位以下の指名で下位指名も見受けられる。阪神・金本知憲は4位、ソフトバンク・工藤公康とオリックス・福良淳一は6位。何と日本ハムの栗山英樹は83年のヤクルトドラフト外入団なのだ。ドラフト直後や入団発表の席では上位指名の選手にスポットは当たる。しかし、下位指名でも努力次第でチームの中心戦力となり、監督の座を射止めることも出来る。


◆ 昨年のドライチたちは!?

 そんな視点でドラフトを見ていくと、今季のルーキーたちの「通信簿」も気になる。新人王の最有力候補はセ・リーグが高山俊(阪神1位)、パ・リーグは茂木栄五郎(楽天3位)と高梨裕稔(日本ハム)の一騎打ちか。高梨の場合はプロ3年目でルーキーとは言えないがドラフト4位の掘り出し物。六大学のエリートが勝つか、雑草が花開くか?パの結果は興味深い。

 昨年のドラフトで話題を集めた楽天・オコエ瑠偉、ロッテ・平沢大河やソフトバンクの高橋純平ら高校生のドライチ組はもともと将来性を買っての指名。その中では中日の小笠原慎之助が一軍で大器の片鱗を見せたのは特筆される。最も失望させられたのは巨人の桜井俊貴で即戦力として一軍の先発ローテーションまで期待されたが故障もあり未勝利では落第と言われても仕方ないだろう。

 ドラフトの印象は1位組に象徴されるが、戦力の強化という観点から見ればもちろん下位まで含めてどう有効な補強が出来るか?今季を振り返ると、ペナントレースの上位に躍進したチームは近年のドラフトで好選手を獲得している。
中でも掘り出し物と言っていい下位指名の顔ぶれを挙げてみる。


◆ 今年の上位はドラフト上手!?

 最もすごいのは日本ハムで、中島卓也と増井浩俊が5位指名なら、中継ぎから抑えまでこなした谷元圭介は7位。初のクライマックス進出を果たしたDeNAは12年のドラフトで2位の三嶋一輝から3位の井納翔一、6位で宮崎敏郎と現在の骨格部を作り、昨年は4位で戸柱恭孝を獲得して捕手の穴を埋めた。

 広島は菊池涼介、鈴木誠也が2位ながら丸佳浩と田中広輔は3位とそつがなく、抑えの中崎翔太は6年前の6位指名だ。資金力にモノを言わせて補強している印象の強いソフトバンクも摂津正は5位、森福允彦が4位指名。野手でも明石健志が5位で本多雄一も5位。日本ハムの中島の場合は福岡工業高時代には全くの無名。たまたまエースの三嶋(法大からDeNA)をチェックしていた担当スカウトの目にとまった。小柄で線は細いが足と肩を評価された。その後の本人の努力も大きいがスカウトにとっても冥利に尽きるだろう。

 今年のドラフトも1位指名の大半は投手の名が占めるはずだ。どこのチームも即戦力の投手は喉から手がでるほど欲しい。したがって野手の大半は2巡目以降となるだろう。高校生野手の場合はほとんど下位指名が濃厚。全国区ならともかく、地方に埋もれているダイヤの原石をどの球団が発見して磨き上げるか? 数年後に掘り出し物は出現しているか? そんな観点からドラフトを見てみるのも面白いはずだ。


文=荒川和夫(あらかわかずお)