これぞ代打の醍醐味だった。4月17日の楽天戦(ヤフオクドーム)、4点差の9回二死二塁、内川の同点打で3点差とし、なお二死一、二塁。代打・吉村裕基は1号同点3ランを放った。延長12回に迎えた次打席ではサヨナラ2ランと劇的な幕切れを演出。たったひと振り、いや、ふた振りでヒーローをかっさらった。 

「初球から相手のボールを振れるかどうかにあります。一番ダメなのは見逃し三振です」 

 最初の劇弾は相手守護神・松井裕の直球を右翼ホームランテラス席へ運んだ。1、3球目の直球にはタイミングが合わず空振りしたが「追い込まれてたし、コンパクトに振れた」と、その前の空振りを調整の材料にした。 

「DHもそうなんですけど、代打で行くのは難しい。一度、心拍数を上げた状態から落ち着かせて打席に入ります。変に背負い込むのは良くないです」 

 例えば守備から戻り、ベンチで一息ついて打席に入るように心身ともにスタメンで入る打席と近い状態に近づける。打席へと向かう歩調をわざとゆっくりにしたり、サインが分かっていても、間を取るためにわざともう一度、出してもらうこともある。落ち着いた自分の「空間」を作り出す引き出しは無数だ。 

「あれは前半戦で一番のゲームだった」と工藤監督も振り返った一打は開幕17試合、17打席目での初安打だった。そこで打てる底力が、代打の切り札と呼ばれる理由なのだろう。