ラインアップ数が増え、年々市場が拡大しているロボット掃除機市場。今は年間100億円規模までに拡大しているという。ロボット掃除機といえば、2015年10月にアイロボット社が発売した「ルンバ980」が注目を集めているが、同時期にネイト ロボティクスが「ネイト ボットバック D8500」を発売した。ネイト ロボティクスといえば、北米ではルンバに次ぐシェア2位のメーカーで、「ルンバ980」の対抗機種となる「ボットバック コネクテッド」を米国で販売している。近々国内に投入予定ではあるが、日本未発売なので、今回は一つ下位モデルに当たる「D8500」と比較した。


 最近、ロボット掃除機を選ぶポイントとして注目されているのは、掃除性能だけでなく、複数の部屋掃除に対応するマルチルームクリーニング機能だ。もちろん、掃除の途中でバッテリがなくなっても、自動で充電し、充電後は掃除途中の場所から再開する機能とセットになっている。この機能を搭載していれば、一部屋だけではなく、留守の間に家中を掃除できるわけだ。
 マルチルームクリーニング機能を搭載する「ルンバ980」と「D8500」が、きちんと複数の部屋を掃除できるか、BCN社内の会議室と応接室、それに会議室と応接室を結ぶ廊下でテストを実施。各部屋に擬似ゴミを撒き、各部屋を掃除するか、どれだけゴミをキャッチするか、掃除終了まで何分かかるかを比較した。
 8畳ほどの会議室に充電台を置き、ここをスタート地点として掃除を開始した。「ルンバ980」はまずスタート地点周辺を掃除した後、廊下へ進み、この廊下を半分ほど掃除してから応接室へと進んだ。応接室も全体の半分ほどを掃除して、充電台のある会議室に戻ってくるまでに22分かかった。
 その後、各部屋の残りの半分を掃除するのに38分13秒、3周目は椅子の下など入り組んだところを中心にゴミを取り、各部屋を3回ずつ掃除して会議室に戻り、充電台にたどり着き充電を開始するまで1時間1分23秒かかった。
 一方、「D8500」は、ナビゲーションプログラムの特徴からか、一部屋ずつ順に掃除をしていった。壁ぎわを掃除してから部屋の中を順に掃除していき、まるで人の掃除の動きに似ていた。会議室を掃除している途中に、廊下へと続くドアまで行ったが、廊下に出ることなく会議室を掃除し、26分14秒かけて会議室を掃除してから廊下へと移動していった。
 その後、掃除開始から31分37秒で廊下の掃除を、54分58秒で応接室の掃除を終わらせると「D8500」はゴミの吸い込みを終了し、充電台まで走行。掃除開始からちょうど1時間後に充電を開始した。清掃時間は両モデルとも約1時間とほぼ変わらなかった。
 次にどれくらいきれいに掃除できたかをチェックしよう。ゴミに見立てた砂を、会議室、廊下、応接室とも30gずつ、計90g散布。掃除完了後にダストボックス内のゴミの量を測定して比べた。「ルンバ980」は90gと、撒いた分のゴミを全てキャッチ。ゴミのピックアップ率は100%だった。一方、「ルンバ980」の前に掃除をした「D8500」は、会議室などにあったホコリもキャッチし、ゴミの量は84g、ピックアップ率は93.3%だった。
 最上位モデルの「ルンバ980」は、カーペットやラグの上で自動で吸引力を上げる「カーペットブースト」を搭載しており、テスト中ずっとこの機能が働いていた。ゴミをしっかり吸い込んでいたが、やや動作音が大きかった。

●「ルンバ980」にここまで迫った「D8500」、そのポイントは?


 結果を見ると、2機種とも複数の部屋をしっかり移動でき、掃除時間も同程度、ゴミのピックアップ率は「ルンバ980」に軍配が上がった。テストをしてみて確かに「ルンバ980」が勝ったが、それより「ルンバ980」にここまで迫った「D8500」に驚いた。「D8500」がここまで健闘できたのは何故だろうか。
 走行の軌跡をたどって気がついたのが、「D8500」は無駄のない走行でくまなく掃除をしていた点だ。一度の走行できっちりとゴミを吸い込む吸引力の強さが特徴で、吸引力を確かめるテストではおはじきまで吸い込んだほどだ。
 その形状も掃除性能を高めるのに貢献している。「Dシェイプ」というアルファベットのDの文字のような形で、進行方向が四角く、後方が半円形になっている。フラットになっている前方にゴミを吸い込む吸引部が先端ギリギリのところに備え付けられているので、壁際1cmまでゴミをキャッチできる。残りの壁際1cmのゴミはサイドブラシでかき込む。なお、「ルンバ980」の吸引部は中心部近くにある。
 またブラシの長さにも違いがある。「ルンバ980」のブラシの長さは17cmだったのに対し、「D8500」は27cmだった。一度の走行で広い範囲のゴミをキャッチできるので、効率よく掃除ができる。
 ネイトの無駄のない動きを可能にしているのが、「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」だ。「SLAM」はセンサから取得した情報を元に、自己位置推定と環境地図作成を同時に行いナビゲーションする技術で、最近では自動車の自動運転機能にも欠かせない技術として注目を集めている。ネイトは、この「SLAM」とロボット掃除機に最適化した独自の人工知能「ボットビジョン」と組み合わせることで、部屋の形状や家具の配置などを識別しながら最適なルートをナビゲートする。
 ちなみに、この「SLAM」は「ルンバ980」も採用しているが、アイロボット社が「SLAM」を採用したのは「ルンバ980」が初めて。対してネイトは2010年から「SLAM」をロボット掃除機に搭載している。
 経験値の違いはさることながら、周囲を識別するための方式にも大きな違いがある。「ルンバ980」はカメラセンサを使った識別方式であるのに対し、「D8500」はレーザーセンサ方式を採用している。
 実際、起動時に本体を少し回転させながらレーザーセンサが部屋全体をスキャンする光景が見られた。壁や家具の位置などを高精度に検知し、部屋の形状や家具のレイアウトなどを把握、規則性のある直線的なパターンで移動する。
 レーザーセンサ方式の特徴は部屋の明るさに左右されにくく、薄暗い部屋でも問題なく動作することである。部屋を真っ暗にしての動作テストでは、「ルンバ980」は周囲を識別できないためかランダムな動きを見せたが、「D8500」は明るい部屋との違いは見られなかった。
 ちなみにネイトが採用しているこのレーザーセンサ方式「SLAM」は、ロボット掃除機では独自開発によって特許を取得しているネイトだけが搭載できるという。これは“他社には真似できない”アドバンテージでもあるといえるだろう。
 もう一つの違いといえば、家具への当たり方にも違いがあった。「ルンバ980」は衝突防止センサを搭載するものの、家具への当たりが少々強かった。対して「D8500」は壁や家具に直角に当たるときはスピードを緩め、また壁や家具に沿って走行することが多いので、大事な家具が傷つきにくい。

●「ネイト D8500」の特徴をまとめた


 「ルンバ980」と比べて優れている点もある。無駄なく効率よく掃除し、「Dシェイプ」デザインと強い吸引力で壁ぎわのゴミをしっかりキャッチする。レーザーセンサでスキャンすることで暗い部屋でも掃除できる点も強みだ。また、ルンバに比べてダストボックスが大きい点も特徴だ。
 「D8500」「ルンバ980」の両方のダストボックスに砂を吸い込み口から溢れる手前まで流し込み、その砂の重さを計測した。「ルンバ980」は607gだったのに対し、「D8500」は915gだった。
 広い部屋や複数の部屋を掃除すると、掃除が終わるまでにダストボックスがいっぱいになり、ゴミを吸い込めなくなってしまう。「D8500」ほどの大容量ダストボックスであれば家中掃除をしてもまだ余裕があるだろう。ゴミ捨ての回数が減ればユーザーのメンテナンスの手間も減るので、ありがたいはずだ。
 もう一つ、個人的に優れていると感じたのが、入って欲しくないエリアを指定する磁気テープだ。「ルンバ980」は同じ機能としてデュアルバーチャルウォールを付属し、見えない壁を作り出し、ルンバの侵入を制限する。しかしバーチャルウォールはペットボトルぐらいの設置面積と乾電池が必要だ。掃除をしないときは邪魔になる上、電池が切れると機能しない。
 その点、ネイトの磁気テープはロボット掃除機に侵入して欲しくないところに置くだけ。電源は不要で、また試しに磁気テープの上に薄いカーペットを敷いてもちゃんと機能する。これなら目立たないので便利だ。
 また、家中を掃除するとなると、侵入禁止エリアを複数設定したいこともあるだろう。「ルンバ980」のデュアルバーチャルウォールは、2個付属しているが、追加すると税込みで8100円かかる。対して磁気テープは4メートルで税込み2700円なので、手軽に追加できる。
 ネイト ロボティクスの竹田芳浩社長に、ルンバとの違いについて聞いた。「スケジュール機能を使い、毎日自動で掃除させることで部屋の綺麗さを維持するのがコンセプト。今回のテストでは、ゴミのピックアップ率は93%だったが、これは1回限りの数値。日々継続して使っていれば、結局、ゴミは100%近くまでとれていく。ゴミセンサを搭載して価格を上げるのではなく、毎日どんどん使ってもらえるように手頃な価格に抑えた。結果として、部屋は一番高価なロボット掃除機を使うのとほぼ同じきれいな状態を保つことができる」と話した。

●ネイトの次期モデルはルンバにどこまで迫るか?


 結果として「ルンバ980」が僅差で勝ったが、「D8500」は大変よい仕上がりになっていた。価格面でみると「ルンバ980」が税込み13万5000円前後なのに対し、「D8500」は税込み6万9660円前後と半額近く違う。価格差を考えると十分健闘したといえるだろう。