小学生の保護者の約半数が、将来、自分の子どもは自立できるだろうかと不安を抱いていることが、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の共同調査で明らかになりました。特に男子の保護者の不安が大きいこともわかりました。背景には、どのような保護者の心理や社会環境があるのかを、ベネッセ教育総合研究所の橋本尚美研究員に聞きました。

保護者の約半数はわが子の「自立」に不安を感じている!

保護者にとって子育ての最終的な目標は、子どもが「自立」することといえるかもしれません。大人になるまでに、他者の助けを得ながらも子どもが自分で生きられる力を育むことは、多くの保護者の願いです。

ところが、小学生の保護者の多くは、「わが子が大人になったときに自立できるだろうか」と不安を抱いているようです。まずは、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所との共同研究である調査結果をご覧ください。

図1を見ると、小学生の保護者の5割前後は、「子どもが大人になったとき自立できるか不安である」と回答しています。特に高学年男子をもつ保護者は約55%が不安を感じています。

「自立」という言葉をどう捉えるかは、保護者によって多少異なるかもしれませんが、「自分の収入で暮らしていける(経済的な自立)」「社会への関心をもち、他者との関係を築くことができる(社会人としての自立)」「自分の考えを持ち、自分で行動できる(学習者・社会人としての自立)」「自信をもち、新しいことや難しいことにあきらめずに挑戦できる(精神的な自立)」といった姿をイメージすることが多いと思われます。

保護者の不安が大きい理由とは?

では、女子よりも男子の保護者のほうが子どもの自立を不安視する背景には、どのような理由があるのでしょうか。1つ目の理由として考えられるのは、男子への期待の高さです。

女子に比べ、男子の保護者のほうが、「できるだけいい大学に入れるように成績をあげてほしい」「将来、世界で活躍してほしい」といった期待が高いことが、同じ調査から明らかになっています(図2)。その分、男子の保護者のほうが不安を抱きやすいことが考えられます。

また、別の調査では、保護者の学力重視の傾向が強まり、保護者が学習面で子どもに関わる程度が、以前より強まっているという調査結果がみられます(ベネッセ教育総合研究所「第4回子育て生活基本調査」2011年度実施)。もし、子どもの学習面に全く関心をもっていなければ、不安を感じることもあまりないでしょう。逆に子どもの将来や学習への期待や関心が高いからこそ、「もっとがんばってほしい」「このままで大丈夫だろうか」といった不安をもちやすくなることが考えられます。

そして理由の2つ目が、男子のほうが、生活習慣や学習習慣が身についていないことがあげられます。図3を見ると、男子の保護者のほうが、ゲームやテレビなどの生活習慣、家庭学習などの学習習慣に関する悩みが大きいことがわかります。また、将来の目標がはっきりとしている子どもの割合は、女子のほうが高い傾向があります。このような性差を一言で表すと、小学生の段階では女子のほうが「しっかりとしている」といえそうです。こうした実態も、男子の保護者が子どもの将来の自立に悩みを抱きやすい一因といえるかもしれません。

先行き不透明な社会環境が不安の一因に?

上記のように保護者の期待や不安が高まっている背景にあると考えられるのが、現代の社会環境です。世の中の移り変わりは激しく、保護者自身、10年先、20年先の暮らしをイメージしづらくなっているのではないでしょうか。そんな社会状況ですから、子どもの将来への不安が強まるのは当然のことといえるでしょう。