進学校だからといって、「ネットいじめ」(インターネットを通じたいじめ)と無縁ではいられない。家庭でスマートフォン(スマホ)の使用ルールを決めても、ネットいじめが完全に防げるとは限らない……。そんな実態を、原清治・佛教大学教授らの研究グループが明らかにしました。今どきのネットいじめに、どう対策を取ればよいのでしょうか。

学力の上下が「いじり」の対象に

研究グループでは、2015(平成27)年度、原教授らが早くから啓発活動に携わっている京都府と、大津市の中学生いじめ自殺事件を契機に対策が急がれている隣の滋賀県にある公私立高校計98校で、ホームルームの時などにアンケートを行ってもらい、約6万6,400人の生徒から回答を得ました。

ネットいじめ(本人がそう感じたもの)の発生率は、生徒全体で5.2%。学校の偏差値別(関西地方の情報誌による)で見ると、偏差値が高くなるほど減る傾向はあるものの、グラフにしてみると、下位層・中位層・上位層それぞれにヤマがある、右肩下がりの「W型」を描きます。例えば偏差値61〜65の高校では2.1%なのに、66以上の<超進学校>では3.1%に上がります。

ネットいじめの様態が、学力階層別で違っていること自体は、過去の研究で明らかになっていました。低学力層では、SNSなどで直接的にけなす「誹謗(ひぼう)中傷型」、高学力層では、個人情報を不特定多数に向けて上げる「さらし型」が多くなっています。

今回、校内での学力段階に注目したところ、中学校時代の成績が「下」と答えた生徒の発生率が高く、とりわけ中学校と高校で成績ランクが上下した場合、「いじり」の対象になりやすいことがわかりました。たとえば偏差値66以上の高校では、中学校・高校を通じて成績上位層にある生徒では発生率は2.3%にすぎませんが、中学校の下位層から高校で上位層になった生徒は、14.3%と突出しています。

学校に応じた啓発活動が有効

では、そんなネットいじめを、どうやって防げばよいのでしょうか。
家庭でインターネット利用に関するルールを決めている生徒は27.4%で、偏差値別では40以下の23.0%から66以上の35.8%と、偏差値が上がるほどふえていきます。しかし、ネットいじめの発生率は、決めている生徒で6.0%と、決めていない生徒の4.9%より、むしろ高くなっています。家庭ルールを定めただけでは、ネットいじめの被害を防ぐことはできないのです。

注目すべきは、両府県の発生率の差です。京都と滋賀は「京滋地区」と呼ばれるように、関西の中でも、文化的に近いとされています。しかし、滋賀県が6.7%だったのに対して、原教授らが各校に応じた啓発活動を継続してきた京都府では、4.7%にとどまっています。実際、偏差値61以上の京都の高校で、啓発活動に入った学校だけ、発生率が極端に低くなっていました。

ネットいじめは、ネットという特殊な世界の中だけで発生するのではなく、「リアルいじめ」の反映であることも、同グループの研究から明らかになっています。子ども一人ひとりの心理や生徒同士の関係を丁寧に見つめ、関わっていくことが、ネットいじめを無くすにも不可欠なのです。

※ネットいじめの実態に関する実証的研究
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H03491/

(筆者:渡辺敦司)