家計管理は夫婦によって様々です。夫の給与をすべて管理している妻がいれば、夫から決まった生活費だけ渡される、もしくは完全に別財布ということも。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた方の場合、家計が窮乏しているにもかかわらず、夫が収入を明かさずにいることに悩んでいます。

投稿者によれば、「今まで収入の管理は夫がしてきましたが、生活がきつく貯金もできず、最近では身内の結婚祝い金も用意できませんでした。カードの支払いも36回分割にする」ほどの経済苦におちいっているそうです。

さらに気がかりなのが、夫が独断で投資用のマンションを3軒も購入していたこと。すべて事後報告で、投稿者は何も知らされていません。投稿者は、「子供もふたりおり、将来が不安でたまりません」と胸の内を明かしています。給与明細や通帳を見ながら夫と話し合おうとしたようですが、夫からは「見ても何も変わらない」と、断られてしまったそう。

そこで投稿者は、「この状況で、妻が知る権利として法律的に主張できるものはありますか?」「仮に離婚するとしたら、事前に最低限おさえておかなければいけない情報はなんですか?」と、質問しています。

夫婦間でも給与明細、通帳はプライバシーになるのでしょうか? また、妻に収入を明かさずに高額を使うのに、妻に渡す生活費は少ない。それを理由に、離婚することはできるのでしょうか。中西雅子弁護士に聞きました。

 ●妻は「夫の収入を知る権利がある」

法律の規定はありませんが、潜在的には、妻には夫の収入等を知る権利があると言えます。

夫婦は、同居し相互に協力し扶助する義務があり(民法752条)、共同生活が本質です。資産や収入その他一切の事情を考慮し、婚姻費用を夫婦で分担することになります(民法760条)ので、その前提として、双方の収入等が明らかになっていなければなりません。

同居していても婚姻費用の請求は可能ですから、妻という立場で勤務先に照会することもできます。婚姻費用分担の調停を申立て、夫に収入の資料を提出させる、勤務先に対する裁判所からの職権調査も可能です。

収入を明かさず夫は高額を使うのに、生活費が少く、家計が窮乏しているということのみをもって、離婚原因の一つ「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に該当するとは言えません。

しかし、夫婦間の意思疎通もできず、婚姻生活が継続できない状況に発展した場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」(同法同条5号)に該当し、離婚は可能と言えます。

もし離婚したいと考えているならば、夫の給料振込先や購入した投資用マンションの支払いや賃料収入の利用口座など、夫名義の通帳の金融機関名、支店名、口座番号、マンションの所在場所など夫名義の財産の情報を控えておくといいでしょう。

【取材協力弁護士】
中西 雅子(なかにし・まさこ)弁護士
東京音楽大学卒業、平成19年に弁護士登録。
離婚や遺言・相続等の家事事件を中心に、損害賠償事件、不動産関連等の一般民事事件、商標問題などを取り扱う。東京弁護士会所属。
事務所名:中西雅子法律事務所
事務所URL:http://www.mnpf-law.jp/