彼氏の子どもを妊娠した後に、彼には内縁の妻がいることがわかったーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある女性からの悩みが寄せられました。

女性は、妊娠してから、交際相手に内縁の妻がいることを知りました。独身だと思っていた彼は、法律婚こそしていないものの、ある女性と「事実婚」状態だということ、自分自身は浮気相手にすぎないとわかったのです。

女性が心配しているのは、自分は「不倫」してしまったのかどうか、という点です。女性は知らなかったとはいえ、内縁の妻から不貞行為を理由に訴えられてしまう可能性はあるのでしょうか。また、これから子どもを出産したとして、彼と正式に結婚をすることはできるのでしょうか。有坂 秀樹弁護士に聞きました。

 ●「内縁の夫婦でも貞操義務はあります」

「内縁」とは、どのような関係を言うのでしょうか。内縁と認められるためには、夫婦関係を形成する意思を持ち、精神的・経済的な協力扶助をしながら、共同生活を一定期間継続している実態が必要です。ただ同居しているだけの「同棲」とは、このような実態がある点で異なります。

そして、内縁の夫婦の間にも「貞操義務」があり、内縁の共同生活につき保護されるべき利益があります。内縁の妻がいることを知りながら肉体関係に及んだ場合には、不法行為となり慰謝料の支払義務を負います。

では、相談者のように「内縁の妻がいることを知らなかった」場合には、どう判断されるのでしょうか。判断基準は「知らなかった」ことに過失があるかどうか、です。ここで言う「過失」とは、本来であれば、相手に内縁の妻があることを予測できた、また予測すべき状況であったのにもかかわらず、「知らなかった」ような場合を指します。

相談を寄せた女性が、交際相手との交際中や肉体関係を重ねていく中で、見たり聞かされたりした交際相手の言動や生活状況から、交際相手に既に共同生活実態のある内縁妻がいることが十分に予測でき、また予測すべき状況であったかどうかがポイントになります。

仮に、「内縁関係の存在を知らなかった」ことについて過失がある場合には、不法行為となり、慰謝料の支払義務があります。もちろん、交際相手と肉体関係に及んだ際に、その内縁関係が既に破綻していた場合には、慰謝料の支払い義務は負いません。

なお、内縁は、法律婚ではありませんから、重婚とはなりません。今後、交際相手と正式に結婚をする事自体は法律上可能です。ただ、内縁妻がいることを知りながら内縁が解消、または破綻状態に至る前に結婚をした場合には、内縁妻からの慰謝料請求を受けることになります。

内縁解消を待ってから結婚するのが現実的といえます。

【取材協力弁護士】
有坂 秀樹(ありさか・ひでき)弁護士
離婚・相続・成年後見・債務整理・交通事故・労働事件・刑事事件など一般市民の法務から、不動産賃貸、債権回収・契約書や利用規約作成・労務管理等の中小企業法務まで幅広く業務を手がけている。 共著に「実践 法律相談 面接技法のエッセンス」(東京大学出版会)。

事務所名:林・有坂・伊藤法律事務所
事務所URL:http://hai-lawoffice.jp/index.html