配偶者が、自分以外の誰かと旅先で睦み合っている...そんな光景を想像したら、いてもたってもいられないでしょう。ネット上には、配偶者の「不倫旅行」が発覚し、ショックを受けている人から多数の相談が書き込まれています。

結婚2年目の絵里子さん(仮名)は、「会社の出張」とばかり思っていた夫の外泊が、不倫旅行だったことが発覚。「鞄のポケットに出張先と異なる場所の散歩・グルメマップ・秘宝館案内が顔を覗かせて」おり、夫を追求したところ、「勝手に見たんだろ」と逆切れされたそうです。口をきいてもらえないまま、夫は旅立ったといいます。

来月、妻が不倫旅行に行くことが分かったという寛さん(仮名)は、すでに日程・宿泊先ともに突き止めている模様。「二人一部屋 男女各1名で予約」しているといいます。寛さんは旅行先に乗り込んで、妻と離婚するための証拠を確保したいと考えているそうです。

怒りのあまり、証拠を押さえるためなら手段は問わないと息巻く人もいるかもしれません。不倫旅行の証拠を確保するために、尾行をして写真を撮ったり、鞄にGPSや盗聴器を仕込むことは法的に問題ないのでしょうか。妹尾悟弁護士に聞きました。

 ●「プライバシー権の侵害になる可能性があります」

不倫旅行の証拠集めについては、プライバシー権の侵害が問題になります。その人がどこで誰とどんな行動をしていたか、という情報は、プライバシー権で保護される対象になる場合があります。尾行や写真撮影は、そのような情報を勝手に集めることになりますので、プライバシー権の侵害として違法となる可能性があります。

プライバシー権の侵害かどうかの判断は、(1)その情報の内容・性質、(2)侵害の態様・程度などから、個別の事案ごとに評価されるという考え方が一般的です。特に、その情報が外部に公開されたものであるかどうか、誰でもその情報にアクセスできるかどうかは、判断の重要なポイントです。誰にでも接することができる情報であるかどうかによって、その収集・把握から保護されることの期待が変わってくるからです。

たとえば、不貞が疑われる配偶者を公道上で尾行しても、プライバシー権の侵害とされる可能性は低いでしょう。配偶者の行動は公道上を行き交う人々であればだれでも目にすることができ、保護の期待が低いからです。

一方、宿泊先の部屋に入り込んで写真を撮影するようなことは、違法とされる可能性が高いでしょう。一般的に、旅館の部屋の中はプライバシー保護の期待が高い領域であるといえるからです。また、宿泊者の同意なく部屋に入り込めば、刑法上も住居侵入罪が成立する可能性がありますから注意が必要です。

不倫の証拠を確保するために、配偶者の鞄などにGPSや盗聴器を仕込むことも、プライバシー権の侵害とされる可能性が高いと考えられます。GPSや盗聴器は、その行動や会話が逐一把握される点で、プライバシー侵害の度合いが非常に大きいからです。

 ●適切な証拠で裁判を争うために

次に、配偶者や不倫相手に慰謝料などを請求するために、どのような証拠を確保すればいいのか考えてみましょう。

例えば、配偶者と不倫相手がラブホテルに入っていく写真などがあれば、その写真だけで不貞行為の立証に役立つと考えていいでしょう。

一方、宿泊施設がシティホテルなどの場合、ショッピングや打ち合わせなどのためにホテルのショップやロビーなどを使うこともありますから、そこに入っていく写真だけでは不貞の証拠としては十分とは言えません。

客室に2人で入っていく写真までが撮影できれば有力な証拠にはなり得ますが、反面、撮影の場所や方法によっては、先ほどご説明したプライバシー権の侵害が問題になる場合があるので注意が必要です。

プライバシー権を侵害してまで不倫の証拠を確保しようとすると、逆に、不倫をしている配偶者や不倫相手から慰謝料を請求される可能性があります。また、せっかく用意した証拠が、「違法収集証拠排除法則」によって、証拠としての能力を否定されてしまうことがあり得ます。

「違法収集証拠排除法則」という言葉はあまり聞き慣れないと思いますので、ご説明します。これは、大まかにいえば、違法に収集された証拠を、裁判で証拠として採用することを否定する考え方です。刑事訴訟でしばしば問題になるルールですが、民事訴訟でも問題になり得ます。

一般に、民事訴訟で証拠の排除が認められるのは例外的であるとは言われています。しかし最近、民事訴訟で証拠排除を認めた裁判例(東京高等裁判所平成28年5月19日判決。なおこの裁判例は、不貞の事案ではありません)も出されていますので、単なる理論上の問題にはとどまりません。

ご自分は配偶者の不貞行為の被害者であるのに、配偶者や不倫相手からプライバシー侵害の加害者であるかのように主張されて、さらに傷つけられるようなことがあっては元も子もありません。配偶者の不貞に気付かれた場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします。

【取材協力弁護士】
妹尾 悟(せのお・さとる)弁護士
政令指定都市勤務を経て、平成21年に弁護士登録。「家庭の問題はいちばん身近でいちばん深刻な法律問題」を合言葉に、市民目線の弁護活動を積極的に展開中。
事務所名:妹尾綜合法律事務所