薬物問題にくわしいジャーナリストの矢部武氏が9月23日、東京・有楽町の外国特派員協会で「日本の薬物問題と大麻解禁」をテーマに記者会見を開いた。この中で矢部氏は、「日本では娯楽用の大麻を認めるのは(今のところ)難しいが、医療用に関しては検討する価値がある」と医療用大麻の解禁について発言した。

矢部氏によると、アメリカでもおよそ半分の州で合法化されるなど、世界的に医療用大麻を認める地域が増えている。大麻には大きく分けて、鎮痛と炎症を抑える効果があるといい、たとえば、矢部氏が以前取材した、イスラエルの老人ホームでは、入所者が医療用大麻を使って、関節痛などを和らげていたそうだ。

一方、厚労省の資料では、大麻を使用することで、めまいや平衡感覚障害、人格障害など心身に悪影響があるとされており、日本では危険なものと位置付けられている。法律では、不正栽培や所持・授受が禁止されている。

これに対し、矢部氏は、アルコールに比べ、大麻は依存性や中毒性などの面で、危険性が低いという海外の研究を引用し、「『違法性』と『危険性』は必ずしも同一ではない」と大麻の安全性を強調する。

矢部氏は、「知識が不足している今の日本で、大麻を全面解禁しても混乱が起きる」と前置きしたうえで、「緑内障やリウマチ、てんかんなど、特定の病気に限定して、まずは医療用を解禁したらどうか。危険性が(ないことが)分かってくるので、そこから議論を進めたら良い」と持論を展開した。

●医療用大麻解禁には何が必要か?

医療用大麻解禁をめぐっては今年7月、末期がんの治療に大麻を使い、大麻取締法違反(所持)の罪に問われていた山本正光さんが、判決を前に亡くなっている。山本さんは「大麻はがん治療に有効で、苦痛も和らぐ。治療のためだった」と無罪を主張し、医療用大麻の解禁を求めていた。実際に食欲や睡眠がとれるようになり、腫瘍マーカーなどの数値も改善されたという。

記者会見の会場から、解禁に向けて何が必要かと問われた矢部氏は、「患者には、ベストの治療を受ける権利がある。一般の人が『自分も山本さんのようになるかもしれない』という意識を強く持っていけば、政治的なプレッシャーになる」と答えた。

また、日本の製薬会社の中には、海外で医療用大麻の研究をしている社もある。たとえば、大塚製薬はイギリスの企業と共同で、医療用大麻製剤「サティベックス」を開発しているという。矢部氏は「海外でそういう薬が販売され、効果があるという事実が積み重なってくれば、日本に住む一般の人の意識やマスコミの報道も変わってくるのではないか」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)