アマゾンの電子書籍読み放題サービス「キンドル・アンリミテッド」に提供していた作品が削除されたことを受けて、大手出版社が相次いで抗議の声をあげるなど、波紋が広がっている。

講談社は10月3日、「キンドル・アンリミテッド」に提供していた約1000作品すべてが削除されたことから、ホームページ上で抗議の声明を発表。弁護士ドットコムニュースの取材に対して、同社広報室は「ふつうの日本企業ならありえない対応だ。今後も改善に向けて話し合いを続けていきたい」と述べた。

また、小学館も一部の作品が対象から削除されたことを受けて、「サービスに加入した読者に対して十全な対応ができておらず、著作者にも不安を与えている」とコメント。アマゾン側に改善するよう申し入れたとしている。

くわしい契約内容は明らかになっていないが、報道によると、キンドル・アンリミテッドでは、ダウンロードごとに著作権者側に課金されるシステムになっている。講談社や小学館の人気作品が予想を超えるダウンロードだったために、アマゾンが停止したとみられるという。

キンドル・アンリミテッドは、月額980円で電子書籍が読み放題になる定額サービスで、今年8月からサービスがはじまった。こうした定額サービスは「サブスクリプション・モデル」ともいわれて、注目をあつめている。今回の出来事について、福井健策弁護士に聞いた。

●「コンテンツ販売契約はプラットフォーム側に一方的に有利である場合が多い」

「今回の個別ケースを離れていえば、アマゾンやアップルのようなプラットフォームは、コンテンツ提供者との契約で、提供されたコンテンツをいつ、どのように販売するかの自由裁量を求めがちです。

これは、むしろ通常の条件といえますが、その他の点でも、コンテンツ販売契約はプラットフォーム側に一方的に有利である場合が多いです。

その象徴といえるのが、『他の電子書店に提供するのと同等以上の条件で必ずアマゾンにも電子書籍を提供すること』を義務づける、いわゆる<最恵国条項>です。

公正取引委員会が今年8月、独禁法違反(拘束条件付き取引)の疑いで、アマゾンに立ち入り調査に入りました。政府はこうしたプラットフォーム契約の公正・公平さを今後も注視するとしています。(参照:http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1608/17/news026.html)」

●プラットフォームの寡占化が進んでいる

「米国では、レコード産業全体の売上が2年連続で小回復を見せるなど、サブスクリプション・モデルは音楽業界の救世主ともいわれています。

一方、コンテンツを提供している企業からすれば、コンテンツの売上低下・価格低下(フリー化)が続くなかで、苦渋の選択として参加してきた部分もあります。

プラットフォームの寡占は進み、アマゾンやアップルのサービスに乗らなければ、存在自体が埋没する。しかし、乗ったところで、数十〜数千万のコンテンツが提供されるのが常態のモデルにおいて、個々のクリエイターへの対価還元は決して多くないとされます。

稼いでいるのは、もっぱらプラットフォームであるともいわれます。米国の経済誌で発表された今年の長者番付では、アマゾンCEOのベゾス氏が資産670億ドル(約6兆9000億円)で2位になるなど、上位10名中5名までがプラットフォーム創業者で占められました。

こうした軋轢の解決は容易ではなく、ユーザーからは中で何が起こっているか見えにくいのも問題です。一つには、巨大プラットフォームと社会が幸福に共存するため、公正な契約慣行やオープンな運営を求めていくことでしょう。

もう一つは、同時に、日本独自のプラットフォームやビジネス発信を育てていくことです。いずれも、EUも探っている道筋です。オーソドックスですが、この二つだろうと思っています」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
福井 健策(ふくい・けんさく)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。日本大学芸術学部客員教授。thinkC世話人。「18歳の著作権入門」(ちくま新書)、「著作権の世紀」「誰が『知』を独占するのか」(共に集英社新書)、「ネットの自由vs.著作権」(光文社新書)ほか知的財産権・コンテンツビジネスに関する著書多数。Twitter:@fukuikensaku
事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com