部活動での事故や顧問教師の労働問題など、部活動をめぐる課題について考えるシンポジウムが10月8日、東京都内で開かれた。柔道や組体操での事故、部活動顧問の負担などについて意見を発信している名古屋大学大学院の内田良准教授が登壇。部活動の練習時間や日数、参加大会数を減らしたり、朝練をやめるなどの「ゆとり部活動」を目指すべきだと話した。

シンポジウムの主催は子どものスポーツ事故撲滅を目指す「青少年スポーツ安全推進協議会」。

内田准教授によると、神奈川県教育委員会が2007年、運動部における1週間あたりの活動日数の理想と現実を調べた調査では、中学校・高校の教員と生徒ともに、1週間の理想的な活動日数は「5日以下」との回答が過半数を超えていた。しかし現実は「6日以上」実施されているとの回答が多数だったという。

週6日となると、土日を返上して部活動を行うことになる。内田准教授は、「なぜ土日にまで部活動をするのかと聞くと、先生は『生徒たちがやりたいって言うから』、生徒は『先生がやれって言うから』と答える。本当はみんな休みたいのに、お互いに首を絞め合って過酷な練習をしている。緩めることが必要だ」と語った。

●「競技」の論理と「教育」の論理を分けて考える

部活動の過酷な練習の弊害の1つが、練習中に頭を打って意識不明になるなどの重大事故の発生だ。内田准教授は、重大事故の背景に「スポーツ科学とは無縁の暴力・根性の世界がある」と述べる。

「例えばいくつかの柔道事故では、ふらふらの状態で投げられて頭を打ったりしている。(身体の)芯がしっかりしていれば受け身を取って自分の身体を守れるのに、ふらふらになっても乗り越えることで『成長した』と言われるのが日本の文化」

以前、内田准教授が「甲子園のベンチにはクーラーがついている」とツイッターに投稿したところ、ある人から「俺の感動を返せ」と言われたことがあったという。このやり取りについて内田准教授は「選手が苦しみながら投げている姿にジーンとくるのはわかる。でも、苦しみながら投げていたら、『ちょっと何やってんの?』と考えるようにならなければいけない。それが日本のスポーツ文化の課題だと思う」と話す。

部活動問題を考えるにあたって、内田准教授が強調したのが、勝つことが第一目的で選手養成を重視する「競技」の論理と、子どもの心身の発達や社会性の育成を第一に考える「教育」の論理を分けて考えることだ。

「競技の論理は、できるだけ民間のチームに任せたい。基本的に部活動は、子どもが、授業以外で文化活動やスポーツに触れるための機会保障だと考えている。機会保障であるなら週6〜7日もの練習は不要で、週3〜4日で十分。部活指導を嫌がっていた先生も、『授業以外で子どもと触れ合うのは楽しいし、3日くらいならいいかな』と思えるのではないか。

部活動を縮小することで、子どもへの機会保障と教育の論理を達成できる。競技の論理としても『勝ちたければ休む』というのがスポーツ科学の考え方で、練習日数を減らすことは間違いではない。教員も生徒も『3日くらいならできるかな』と自主的に部活動に参加しやすくなり、部活動の過熱化も抑制することができる」。内田准教授はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)