2016年は、2年に一度の診療報酬の改定年。4月1日から病院、診療所、薬局などで支払う医療費が変わったことに気付いた人もいるかもしれない。得する薬局のかかり方や大病院を受診する際に気をつけておきたいことなど、身近なシーンを中心に、改定の影響を見てみよう。今回の改定では、「儲けすぎ」ともいわれる薬局にもメスが入っている。

 まず、「診療報酬」の仕組みについて簡単に説明したい。公的医療保険制度内の診療や薬の提供は「保険診療」と呼ばれ、国によって価格が決められている。一方、美容医療や保険適用外の医療行為、薬などは「自由診療」となり、提供する医療機関が自由に価格を決めることができる。

 国が決める医療の価格が「診療報酬」と呼ばれ、2年に一度、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会で決定される。「本体」と呼ばれる医科、歯科、調剤報酬は4000種類以上の項目が定められているほか、保険診療で処方される薬の価格も決められており、「薬価」と呼ばれる。16年の改定では、本体で+0.49%、薬価全体で−1.52%となっている。

 診療報酬は点数で表記され、1点が10円となる。医療機関で発行される明細書(レセプト)を見ると、点数の内訳が記されているが、実際に患者が窓口で支払う金額は、現役世代(70歳未満)で3割、70歳以上は原則として1割になる。

 小児については自治体で補助が出る場合もあり、無料の地域も多い。また、生活保護受給者も無料だ。窓口負担分以外は、日頃払っている社会保険料や税金で賄われている。

●お薬手帳を忘れると料金が高くなる?

 今回の改定で一番変わったのは、薬局で払う調剤報酬だ。病医院で発行された処方箋を調剤薬局に提出して薬を出してもらうことを「院外処方」という。高齢者になるほど、複数の医療機関にかかって複数の薬を飲むケースが多い。

 そのため、高齢者分だけでも約500億円分の薬が無駄になっているとの試算もあり、国は「かかりつけ薬剤師」の導入を推し進めようとしている。1人の患者の処方状況を1人の薬剤師(薬局)が把握することで、重複した投薬や飲み合わせによる副作用を減らそうという狙いだ。

 その患者が、どんな薬を飲んでいるかを把握するために使われるのが「お薬手帳」。薬剤師が患者の薬の状況を把握し、指導することに対する報酬は、「薬剤服用歴管理指導料」として算定され、お薬手帳を持って過去6カ月以内に来店した患者は、処方箋1回につき38点(380円)、3割負担の場合は窓口で支払う額は約110円になる。

 一方、初めてもしくは6カ月以上たって来店したり、お薬手帳を持参しなかったりした患者の場合は、処方箋1回につき同50点(500円)となる。患者負担は3割で約150円だ。

 つまり、利用する薬局を決めて毎回お薬手帳を持参すれば、40円程度安くなるというわけだ。これまでは、お薬手帳ありが41点(410円)、なしは34点(340円)で、持参しないほうが患者は得をする状況だった。

 さすがに、この状況は手帳持参の推進に逆効果になっているとして改定されたが、薬局にとっては、手帳を持参されると1人につき120円売り上げが減少することになる。もし、窓口でお薬手帳の持参を促されなかったら、その薬局は、患者の健康よりも売り上げを重視しているのかもしれない。

●日本医師会が薬局の「儲けすぎ」に警告

 薬局をめぐっては、近年「儲けすぎ」という批判も根強く、日本医師会が大手薬局チェーン社長の給料を問題視するレポートを公表するなど、調剤薬局への報酬引き下げを求める意見が出ていた。例えば、日本調剤の三津原博社長の14年の報酬は6億7700万円に達している。

 結果的には、調剤報酬全体では微増となったが、大病院の前に乱立する“門前薬局”への報酬が引き下げられた。お薬手帳持参者に対しての30円の値下げも、その流れにあるという見方もあり、日本医師会医理事は「今後も厳しく見直しを求めていく」と述べている。

 ほかに、身近なところでは、大学病院などの大病院に紹介状なしで受診する際、初診時に5000円(歯科では3000円)の定額負担が義務付けられた。高度な医療を提供すべき大病院を軽症患者が受診することで、効率的な医療提供ができなくなっているというのが理由だ。

 大病院受診時の負担を大きくすることで、患者を診療所や中小病院に誘導しようという施策だが、結果的に2つの医療機関を訪れることになると、時間的にも費用的にも、患者の負担はそれなりに大きくなる。5000円では期待通りの効果が上げられないとして、早くも次期改定でのさらなる負担増も予想されている。

 13年度の日本の医療費は、約40兆円。高齢化の進展で当面は増加の一途をたどり、国家財政にとっても大きな負担だ。窓口で払う以上の金額が、保険料や税金で賄われている。一人ひとりが医療の適正利用を心がけるというのは、想像以上に重要なことだろう。
(文=編集部)