9月14日、米株式市場の取引で米アップルの株が年初来高値を更新し、時価総額が6000億ドル台まで回復した。回復したのは今年4月以来で、この日の取引では6070億ドルとなり、米アルファベット傘下のグーグル(5530億ドル)や、米マイクロソフト(4400億ドル)を超えた。

 これは、同月7日にアップルが発表したiPhone 7/7Plusの投入で同社の減収に歯止めがかかるとの期待から買いが入ったためである。その後も、米スプリント・ネクステルや米TモバイルUSなどの通信大手が、iPhone 7の事前予約が好調であることを明らかにしたことで、株価上昇の追い風となった。

 このように米株式市場で好意的に受け止められているiPhone 7/7Plusであるが、その製品開発には、「技術進歩のジレンマ」が見えてならない。

 今回発表されたiPhone 7Plusの最大の特徴のひとつは、2つのカメラである。そのひとつはiPhone 7にも搭載されている開口部f/1.8の広角カメラで、フォーカスピクセルを使ったオートフォーカスに加え、光学式手ぶれ補正機能付きのセンサーを兼ね備えている。

 2つ目はこれらの機能に加え、f/2.8の望遠レンズが追加されたカメラで、2倍の光学ズームと最大10倍のデジタルズームが可能となる。これら2つのカメラはデュアルレンズとして、ワンタッチによる切り替えが可能である。

 さらに、A10 Fusionチップに画像信号プロセッサ(ISP:Image Signal Processor)が内蔵され、1000億もの演算を0.025秒で処理可能な超高性能に加え、機械学習により被写体や背景などに最適な明るさや色調を計算して1枚の写真に落とし込む機能が実現された。

 このようにiPhone 7Plusでは、光学的には難しいとされる効果的な表現を実現するという大きな技術進歩を遂げた。だがそれは、見方を変えれば「過剰ともいえる性能」がiPhoneに備わったことになる。それは明らかに技術の進歩が市場ニーズを上回り過剰になりつつあることの表れである。

●「iPhone離れ」の懸念

 それでは技術進歩が市場ニーズを上回り過剰になると、どのようなことが起こるのか。その教訓はさまざまな市場で歴史が示している。わかりやすい例は、1980年以降に展開された家庭用ゲーム機の開発競争であろう。

 任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)に端を発した家庭用ゲーム機の開発は、その後、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE、現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)やセガ・エンタープライゼス(現セガゲームズ)、米マイクロソフトなどが次々と参入し開発が激化する。

 開発競争はやがてオーバースペックを引き起こし、SCEは2000年に当時としては高価なDVDプレイヤー機能を搭載したプレイステーション2を高価格で売り出し、ユーザの「プレステ離れ」ひいては「ゲーム離れ」を招くことになる。

 同様の事態は、スマートフォン市場にも十分に起こり得る。当面iPhoneは現在のポジションを維持するであろうが、オーバースペックがやがては日本市場でも「iPhone離れ」を引き起こすことを、アップルは見過ごしてはならない。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)