日本人の70%が興味、関心を抱いているといわれるのが「ダイエット」です。世の中には、さまざまなダイエット法が溢れかえっており、つまりそれらに取り組んでいる人も多数います。

「ダイエット」という言葉をインターネットで検索すると、なんと2億2300万件も出てきますから、驚きのほかはありません。すべてを閲覧することは無理ですが、上位にあるいくつかの記事を見てみると、数件を除いてダイエットの意味を取り違えています。

 ダイエットは本来、単に飲食物、食品といった意味でしたが、アメリカの医師と管理栄養士が協力して超肥満者向けに開発した、健康を取り戻すための食事プログラムのことをダイエットと呼んだことをきっかけに「健康的な食事のシステム」という意味で使われることが多くなったのです。その後、健康的な食事を目指す一般の人の間でも取り入れられ、本格的にダイエットが研究、実践されるようになりました。

 日本では、ダイエットは「痩せるための方法」と思われています。ダイエットを実践するにあたって何より重要なのは、食べる量の調節ではなく、食べるものの質に着目するということです。痩せることが目的なのではなく、あくまでも健康的な食事内容であることが大事なのです。その結果として痩せることもあるのです。ダイエットの第一義は、健康的な食事を継続することなのです。

 これは言うまでもないことですが、食事は全体性が大事です。したがって、いわゆる単品ダイエットは本当の意味のダイエットとはいえません。チョコレートダイエット、バナナダイエット、はたまたプロテインダイエットなどは、ダイエットではないのです。なぜなら、健康的な食事のシステムとはほど遠いものだからです。また、体の一部の形状を変えることも、ダイエットとはなんの関係もないといえます。太ももダイエットや、おなかダイエットなどに至っては、もう笑うしかないという感じです。

 日本でダイエットが誤解されてしまったのには、わけがあります。それは、ダイエットに目をつけて、センセーショナルに取り上げたのが女性雑誌だったことに起因しています。要するに、雑誌を売りたいがために、あることないことぶち上げて痩せるための方策のように読者に思い込ませ、次から次へといろいろな方法を誌面に載せたわけです。

 悪辣な方法と思ってしまうかもしれませんが、編集する側にはさしたる意思があるわけではなく、ただ無知なだけだったのだと思います。雑誌を売るための稚拙な方策のひとつでしかなかったのです。

●「油=ダイエットの敵」は誤解

 そういうなかで筆者が心底あきれてしまうのは、あたかも油がダイエットの敵であるかのように語っている人たちがいることです。カロリー中心主義に陥っていると、「摂取カロリーが消費カロリーより大きいと太る」というあまりにも単純な理論が、正しいことであるかのように誤解してしまいます。

 その考えの延長線で、カロリーが高い油はなるべく摂取しないほうがいい、というこれまた単純な結論が導き出されてしまうのです。栄養学では、油はどんなものでも1グラム=9キロカロリーの物質でしかありません。その油が含んでいる脂肪酸の種類などにはまったく着目していないので、カロリーを低く抑えれば健康的な食事だと勘違いし、その結果、油はダイエットの敵といった発想になってしまうのです。ちなみにたんぱく質も炭水化物も1グラム=4キロカロリーとされています。カロリー計算だけでダイエットを考えるのは、まったく無意味なものです。

 読者の皆様には、油(脂肪)を摂取しないことは正しいダイエットではないと、知っていただきたいと思います。適正に油を摂取せずに健康的な食事を組み立てるのは不可能です。なぜならば、私たちの体には油が必要だからです。ただし、油ならばなんでもいいのではなく、質を考えなければなりません。

 油には、たくさんの種類があります。そのうち、絶対に食事で摂取しなければならないのは、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸で、この2つの脂肪酸を「必須脂肪酸」と呼んでいます。この2種類がしっかり摂られていると、体内で合成されるのがオメガ9脂肪酸です。したがって、オメガ9脂肪酸は必須ではありませんが、適量を積極的に摂取したほうがいい脂肪酸でもあります。

 オメガ9脂肪酸には、オレイン酸をはじめとしてエライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸などの種類があります。そのなかで私たちが日常的な食事でもっとも摂取しやすいのはオレイン酸だと思います。

●オリーブオイルは粗悪品が氾濫

 そのオレイン酸を多く含んでいるのがオリーブオイルなのですが、このオリーブオイルは玉石混交で、しかも日本ではオリーブオイルの品質に関する規制が甘いため、情報がまちまちで混乱を招いているというのが実情です。

 たとえば、「エキストラバージンオリーブオイル」という表示を付けることに関しての規制はまったくないため、酸化度のことも問われず、ひまわり油や菜種油などが混合していても責任は問われません。

 国際オリーブ協会(IOC)という団体に加盟している国では、協会が定める基準を満たしていなければ「エキストラバージンオリーブオイル」の名称は使えません。しかし、日本はIOCに加盟していないため基準を守る必要すらないのです。行政の立ち遅れが原因で、消費者は商品の正しい選択ができず、悪徳なメーカーや販売会社が不当に利益を上げているという現状があります。

 オリーブオイルには確かに健康効果、また美容効果もありますが、それはエキストラバージンオリーブオイルに限ったことで、それ以外のオリーブオイルには期待が持てないことは、知っておくべきでしょう。

 エキストラバージンオリーブオイルは、オリーブオイルの最高峰といえるものです。それ以外には、ファインバージンオリーブオイル、オーディナリーババージン・オリーブオイル、ランパンテバージン・オリーブオイルなどがありますが、大きな違いはその酸化度です。

 エキストラバージンオリーブオイルの酸化度は0.8%が上限と定められており、ほかのものは2〜3.3%まで認められています。この酸化度の違いが、効果効能に直結します。さらに、それ以下の品質のものはピュアオリーブオイル、または単にオリーブオイルとの名称が付いています。

●体にいいオリーブオイルの選び方

 オリーブオイルを選ぶ時のポイントはいくつかあり、前述の酸化度がもっとも大事なポイントです。また、遮光瓶か、光からオイルを守るための缶、そして箱に入っていることも重要です。オイルの最大の敵は酸化です。価格も大事で、おおよそですが、500ミリリットルで4000円程度が目安と思われます。例外的に、高品質でも価格の安い商品もありますが、慣れないうちは上記の価格を参考にお買い求めになるといいでしょう。また、オーガニック認証を受けているものであれば、それも安心材料のひとつになります。製法の面でいえば、必ず「コールドプレス(低温圧搾法)」で製造されたものを選ぶべきです。原産地の表示があれば、なおいいでしょう。

 オレイン酸が体にいい作用を及ぼすことは多くの方が知るところでしょうが、その機序はオレイン酸が体内にある活性酸素と結びついて、強力に老化を進める過酸化脂質の生成を防ぐことにあります。過酸化脂質は動脈硬化や脳卒中を起こす原因物質となるだけではなく、皮膚の細胞を傷つけてシワやシミなどの原因になります。また、細胞内に過酸化脂質がつくられてしまうと、それがまた新たな活性酸素を生み出し、次なる過酸化脂質をつくるという悪循環、いわゆる酸化の連鎖が続いてしまうことになります。このようなことを防いでくれるのが、オレイン酸の役目なのです。

 もうひとつ、オリーブオイルに含まれるファイトケミカル(植物栄養素)の一種「オレオカンタール」と呼ばれる物質があり、このオレオカンタールが持つ抗炎症作用が非常に強いことに注目が集まっています。オリーブオイルを口に入れるとピリッとした辛みを感じますが、あれがオレオカンタールの特徴です。オレオカンタールが脳の健康を守り、心臓病のリスクを下げ、老化をくい止める役目を果たしていると、多くの栄養学者が認めています。

 私たちは、油に対しての正しい知識を持ち、それを日々の食生活に反映させていくべきです。そうなると、あえて痩せるという必要すらなくなるでしょう。そもそも、人にはそれぞれに合った体形というものがあります。誰もがガリガリに痩せていたり、筋骨隆々という状況は異常です。

 ダイエットというのは、健康的な食事をすることで、本当の意味の自分らしさに気づくことなのかもしれませんね。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)