2015年11月、セブン&アイ・ホールディングス(HD)はインターネットとリアルを融合したオムニチャネル戦略として、「omni7(オムニセブン)」をグランドオープンさせた。サービスの最大の特徴は、セブン&アイHDのコンビニエンスストアやスーパー、百貨店など9つのECサイトで注文した商品をセブン−イレブン約1万8,000店で店頭受取りができる点である。

 同社では、このオムニチャネル戦略をセブン−イレブンの登場に続く第2ステージと位置づけ、業態を超え、ネットと融合した新しい買物習慣をつくることを目指している。この試みは成功するのか、現状と今後の可能性について検討したい。

●現状:事実から確認できること
 
 昨年11月1日にオムニセブンがスタートしてから11カ月が過ぎようとしているが、これまでに「成功した」という声は聞かれない。現状はどうなのか、確認できる事実をみてみる。

・スタート1カ月後:会員数は100万人を突破、ネット通販売上は前年同月比3割増(「日経MJ」<2015年12月9日号>より)
・同3カ月後:会員数は150万人を突破、1日50万人以上が訪問(「WWDジャパン」<2月15日号>より)
・2015年度のオムニセブンの売上が1,418億円。取扱い品目数は300万アイテムへ(セブン&アイHDのIR情報より)
・18年度にはオムニセブンの売上が1兆円。取扱い品目数600万アイテムを目指す(セブン&アイHDのIR情報より)
・セブン−イレブン1店当たりの1日平均店頭受取件数は1〜2件がほとんど(ビジネス誌による15店舗の取材)
・16年度第1四半期決算説明会でオムニチャネル戦略の見直しを公表(セブン&アイHDのIR情報より)

 セブン&アイHDによると、15年度のオムニセブンの売上は「ほぼ計画通り」としているが、第1四半期決算説明会で見直しを公表した。メディアなどで成功事例として取り上げられていないのは、会員数などの実績について対外発表ができていないためであり、ここにきてセブン&アイHDは計画見直しを宣言した。(図表1)

●なぜ、うまくいっていないのか 他社比較

 オムニセブンは、急成長するアマゾン、楽天など大手インターネット通販に対し、ネットとリアルを融合することで対抗、差別化しようとしている。戦略のポイントとして、売場、商品、接客の3つを挙げている。

 売場では、ネットを利用することにより、時間や場所の制約を受けることなく、いつでもどこでも注文できるようになった。また、受取りも宅配だけでなく、24時間セブン−イレブンで店頭受取りができる。このセブン−イレブンの店舗網の活用で、顧客の利便性を高める狙いだ。

 商品については現在の300万アイテムを18年には600万アイテムまで拡大するという。また、品揃えを重視し「セブンプレミアム」やメーカーとの共同開発を増やして、オリジナル商品によって差別化を図ろうとしている。

 接客については、店舗で顧客に最適な接客をするために、商品紹介ノウハウをグループで共有している。また、御用聞きとして、来店することが難しい顧客の自宅へ訪問し、注文を受けるサービスも一部の店舗で導入している。

 このように、これまでのリアル店舗やネット通販個別では体験することのできない買物体験を提供しようとしているが、アマゾン、楽天のネット通販と比較して強みとなっている取り組みは少ない。

 取扱アイテム数は、オムニセブンの当面の目標である600万アイテムが品揃えできたとしても、顧客に選ぶ楽しさやワンストップショッピング環境を十分には提供できない。アマゾンと楽天は1億アイテム以上を扱っており、圧倒的に負けている。また、店頭受取りの店舗数、配送スピードなどの顧客サービス面でも優位にあるとはいえない。優位にあるのは、送料と返品手続きのみである(図表2)。

●接客端末は成功するのか
 
 オムニセブンの第2弾の強化策として打ち出されたのが、「接客端末」である。オムニセブン導入当初は6,000店で展開されていた接客端末を、6月中にセブン−イレブン約1万9,045店全店に導入する。利用方法は、店頭での接客による注文受付のほか、接客端末を持参して顧客を訪問し、その場で受注したりすることを想定している。

 接客端末は1店当たり1台を基本に導入を推進している。接客端末では、オムニセブンに参加しているグループ各社のECサイト商品、グループ会社のセブン・ミールサービスが展開するセブン−イレブンの弁当やおにぎり、サンドイッチといった商品を購入できる。

 単なる店頭受取りではなく、自店にない商材を注文、接客端末を通じて受けることができ、リアル店舗では制約のあった取扱アイテム数の壁を越えようとする試みである。しかし、先行導入店で大きな成果を収めたという声は聞こえてこない。

●オムニセブンの成功条件は何か

 オムニセブンが成功するためには、どうすればよいのだろうか。最大の問題は、セブン&アイHD内で運営していることにある。グループ内でのビジネスにとどまっている限り、アマゾンや楽天を上回る顧客サービスや買物体験を提供することはできないだろう。取扱アイテム数の圧倒的な差は、選ぶ楽しさやワンストップショッピング性に影響し、顧客の利用意向や満足度を左右するからだ。

 よって、セブン&アイHDというクローズドなサービスから、オープンなプラットフォーム型ECサイトへと転換することが必要だ。たとえば、ユニクロ商品のセブン−イレブンでの店頭受取りは想定以上に多かったという。この店頭受取り無料という武器を生かすには、グループの壁を突破しなければならない。ネットとリアルの融合で、セブン−イレブン店舗網というリアルが持つ強みが生きるのは、ロングテール(販売機会の少ない商品も幅広く取り揃えること)の品揃えができたときにある。

 2016年度第1四半期決算発表で、セブン&アイHDの井阪隆一社長は、「グループの目指す方向性 3本の柱」のひとつとして「オムニチャネル戦略の推進(見直し)」をあげている。現在は、ユーザービリティテスト・ビジネスモデル監査中とし、「客観的意見も踏まえ、抜本的な見直しを検討中」と現在の戦略の見直しを明言した。具体的な計画は上期決算説明会で公表する予定だ。オムニセブンの戦略転換が図れるか、今後も注目すべき動きである。
(文=舩木龍三/JMR生活総合研究所、ビジネス・ディベロップメント・マネジャー)