「自分がまわすイベントに来てくれる友達は神!」

 東京都心のとある有名クラブでDJをしている友人が、そう語っていた。そこはメインフロアの他に3つの小スペースがある“箱”なのだが、彼がまわしているのは一番奥の小さなフロア。イベントへ遊びに行くと、いつもシャンパンを1杯振る舞ってくれる。もてなしてくれる理由は上記のような感謝の気持ちからであり、自分のノルマに貢献してくれた御礼だとのこと。

 すべてのクラブイベントがそうとは限らないが、多くの場合、集客ノルマは存在するようだ。もちろん、メインフロアでまわすようなDJやパフォーマーには、そういったノルマは存在しない。なぜなら、その人たちは名前だけで集客が期待できる「スター」だから。

 運営サイド側からすれば、彼らに支払った高額なギャラを回収して利益を上げるには、一枚でも多くのチケットを販売する必要があり、そのために無名DJたちは自らの友人をイベントに呼んだり、果ては出番の前後で店頭に立ちフライヤーを配ったりしなければならない。
 
 ちなみにノルマが未達だからといって、金銭的ペナルティはないらしい。しかし、あまりに集客が少なすぎると、フロアに客が集まる時間にプレイさせてもらえなかったり、最悪の場合クビになることもあるので油断はできない。

 そんな理由から無名DJや駆け出しのDJにとって、イベントに来てくれる人はかけがえのない存在。そんなファンをひとりでも増やそうと、なかには自分の出番が終わってからクラブ内でナンパ待ちをして、男から話しかけられたら「今度イベントがあるんで来てください!」と積極的にPRする女性DJの姿も目につく。

●ギャラは出ても、ほんの小遣い程度

 そういったDJたちの多くが、仕事を掛け持ちしながら、ボランティアでやっているという。大きいクラブだと利益もたくさん出るため、下っ端のDJたちにもギャラを渡しているらしいが、ほんのお小遣い程度とのこと。それも、「20人以上呼べたら、21人目から人数×金額」というように、かなり厳しめな条件が多く、これで稼ごうという発想自体がそもそも無謀。同じ深夜帯の仕事でも、時給1200円のコンビニエンスストアでバイトしたほうがよほどいいお金になるという。やはり、「無給でもいい」というくらい好きな人でないと続かないようだ。

 一方、海外の一流DJになると巨額の報酬を得ているようで、カルヴィン・ハリスというスコットランド出身のDJの年収はなんと約78億円。デヴィッド・ゲッタというフランス出身のDJの年収は約44億円にも上るというのだから、なんとも夢のある仕事である。

 もちろん、そんな大成功をするDJなどほんのひと握り。日本においても、年収1000万円プレイヤーはほんの数人程度。専業DJとしてやっていけているのは1000人に1人といわれ、月収20〜30万円を稼いだだけで御の字という世界なのだ。

 このように、大きな格差が横たわっている厳しいDJ業界。もし、DJの友人がいて、イベントに誘われることがあれば、たまには顔を出してあげてほしい。きっと、あなたのことを神のようにありがたがってくれて、酒の1杯でもおごってくれるはずだ。
(文=小島浩平/ロックスター)