●アメリカ人は請求書に追われて生活している

 アメリカで暮らして実感したのは、「普通の人たちはBill(ビル、請求書)の支払いに追われて日々暮らしているんだなあ」ということ。公共料金のBillもさることながら、一番大きいのはクレジットカードのBillだ。「請求書の支払いをするために仕事をしている気がする」という嘆きをよく聞いた。あなたの暮らしがアメリカナイズされないように気をつけよう。

 アメリカはさまざまな面で世界の最先端を行く。たとえばIT。筆者も働いたことがあるが、公立の貧乏な小学校でもWi-Fi環境が整備されており、授業でノートPCやタブレットを普通に使っている。70〜80代の高齢者もPCを使える。公共、民間とも各種手続きはオンライン、ペーパーレスが基本。PCやWi-Fi環境を持てない人のために、図書館は夜遅くまでPCとWi-Fiが無料で使えるようになっている。

 また、アメリカはクレジットカード先進国でもある。クレジットカードが世界で一番早く普及し、何枚ものカードを持つのが当たり前になった。持っているカードの種類や枚数が、その人のステータスを表すこともある。

●カードをたくさん持つことより「Debt Freeが最高!」へ

 ところが、2008年のリーマンショックあたりから風向きが変わった。不動産の値上がりを前提に、全額ローンで家を買った人たちが不況でローンが返せなくなった。このローンビジネスにかかわった巨大金融機関の倒産がきっかけで、世界経済が大打撃を受けた。

 それまでのアメリカの考えは、「ローンはどんどん借りればいい。ローンでローンを返す生活でも大丈夫。給料は毎年上がるし、不動産もどんどん値上がりするから」だった。貯蓄率ゼロでも、株や不動産の値上がりでやっていけた。それが様変わりした。

 多くのクレジットカードを何枚も持って、買い物の支払いはすべてカードにしていた人たちが、カードにハサミを入れて解約し、デビットカード(即払いのカード)を使うようになった。

 クレジットカードや車のローン、その他のローンをすべて返済して「Debt Free(借金ゼロ)」を目指す人が増え、公共機関や教会で「借金をゼロにして自由な人生を送ろう」というセミナーが開かれるようになった。「私はカードの残高を全部払い終えて、借金から完全に自由になりました!」という人が自分の経験を話して、参加者から喝采を浴びるようになった。

●日本ではリボ払いが標準に?

 さて、日本のクレジットカードの普及率は、いまやアメリカを超えて世界2位(1位はオーストラリア)。そして、クレジットカードの悩みも深くなってきている。特にリボ払いが始まってから。

 ここで、はっきりとさせておこう。クレジットカードで買い物をするということは、代金分をカード会社から「借金する」ということだ。その借金を決済日に銀行からの自動引き落としで返済する。カード残高があるとは、カード会社に借金がある状態だ。

 それでも、支払いが「一括」で今まで一度も延滞したことがないなら、よろしい。利息もつかないし。

 しかし、あなたがリボ払いや分割払いを利用しているなら大いに問題だ。まず15%前後の高い利息がつく。さらに残高を返し終える前に借金を重ねることができるので、借金が減らない。

 たとえば平均して月30万円のカード残高があるとしよう。30万円を一括で払うのは難しいが、リボなら毎月3万円くらいの返済でそれほど大変じゃない。この使い方を続けていくと、払う利息は年間4万5000円。この生活からなかなか抜けられなくて、10年で45万円、20年で90万円もの利息を払い続けることになる。途中で残高が増えれば100万円を超える。消費者ローンやカードローンは「借金」と認識しやすいが、クレジットカードのリボ払いは、借金と気づきにくいところが危ないのだ。

●カードは2枚まで?

 リボ払い、分割払いの怖さは「高い利息をとられる」だけじゃない。リボ生活では貯金ができない。

 リボ払いで毎月3万円、5万円払っていると、現実問題、とても貯金する余裕がない。車などそれ以外のローンも同じだ。貯金ができないというのは、自分の未来に響く。

 あなたが独身者なら、借金のせいで、貯金ができないせいで、結婚が遠のくかもしれない。既婚者なら、貯金ができないことで、子どもを育てるとかマイホームを買うという夢が逃げていくかもしれない。

 あな、おそろしや、クレジットカードにリボ払い。

 というわけで、日本の私たちも、クレジット地獄に苦しんだアメリカの先輩たちにならって、Debt Freeの人生を目指そうではないか。もし今、クレジットカードのリボ払いや分割払いを利用しているなら、1日も早く返済してしまうこと。繰上げ返済だ。そのためには、当分カードを使わない覚悟をすべし。そのあとは、利用額を収入の10%以内に押さえて一括払いだけにする。使うカードは1枚だけに絞る。もう1枚は予備で持っていてもいいけど、原則使わない。あとは解約してハサミを入れる。

 クレジットカードの枚数が多い人は貯蓄額が少ない、という統計を見たことがある。カード1枚でも利用残高や支払いの管理は大変なのに、2枚も3枚もあったらできなくて当たり前。自分を過信しないで、カードは2枚までを厳守してほしい。

 Debt Freeを実現して、貧乏サイクルから抜け出し、貯金できる明るい未来へ一歩を踏み出そう。
(文=中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー)