ウソのような金利の住宅ローンが登場します。この10月からスタートする住宅金融支援機構の「フラット35 リノベ」がそれ。返済期間15〜20年なら当初10年間は0.36%から、返済期間21〜35年でも0.42%から利用できます。固定金利型でこの金利は、まさに驚くばかりです。

●中古住宅にはリフォームローンの壁があった

 中古住宅は新築に比べて価格は確かに安いのですが、その分住む前に一定のリフォームが必要で、その費用負担が重くのしかかってきます。現金でリフォーム代金を支払えればいいのですが、安いからこそ中古を買うのであって、そんな余裕はない場合が多いでしょう。リフォームローンを利用するのも手ですが、こちらは金利が高くて返済期間が短く、毎月の負担が大きくなるため、大きな壁になっていたのです。

 たとえば、2000万円の中古住宅を500万円のリフォームローンを加えて買うとなると、こんな具合でした。

●リフォームローンの返済負担が重しに

 中古住宅を買うだけなら月々5万円強の負担ですむのに、リフォームローンを合わせて利用するとなると毎月の負担は9万円近くに達します。これでは、いくら中古住宅が安いとしても、ローン負担がズシリとのしかかってきます。結果、購入を諦める、あるいはリフォームをとりあえず見送って、多少の設備のいたみや部屋の汚れを我慢するしかないということになります。

 それでは、せっかくマイホームを買ったといっても住まいに満足できず、なんだか暗い気持ちになってしまいそうです。

●リフォーム一体型の住宅ローンも増加

 それを解消するため、昨年あたりからみずほ銀行や住宅金融支援機構などが中古住宅取得時に、リフォームに必要な資金も一緒に借りられるリフォーム一体型の中古住宅のローンを始めるようになってきました。中古住宅取得時に、リフォームに必要なお金も住宅ローンと同じ条件で融資するという、いわゆる「リフォーム一体型」のローンです。

 これだと、中古住宅取得のための2000万円と、リフォームに必要な500万円を住宅ローンと同じように、変動金利型なら0.625%、35年返済で借りられます。そうすると、毎月の返済額は図表2にあるように、6万6286円ですみます。

 仮にリフォーム費用を1000万円にしてグレードアップしたり、購入物件を2500万円にして総額3000万円まで増やしても、毎月8万円弱ですから図表1の例より負担は軽くなります。

●変動金利型よりはるかに低い金利で固定型

 でも、そんなことで驚いていてはいけません。この10月から、住宅金融支援機構が「フラット35 リノベ」という新商品の扱いをスタートさせるのです。
 
 これは、一定条件を満たす性能向上のためのリフォームが行われた中古住宅を取得する場合、または取得後に性能向上のためのリフォームを行う場合、当初5年間または10年間の金利を0.6%引き下げるというものです。2016年9月現在、フラット35の金利は返済期間20年以下で0.96%、返済期間21年〜35年で1.02%ですから、当初の金利はそれぞれ0.36%、0.42%になります。

●35年返済の平均金利は0.85%になる

 ちなみに、20年間、35年間の平均金利を計算すると、20年返済で当初10年が0.36%、残り10年が0.96%なら20年間の平均は0.66%。35年返済で当初10年が0.42%、残り25年が1.02%なら平均0.85%になります。

 メガバンクの変動金利型の金利は0.625%ですから、当初はそれよりはるかに低い金利で全期間固定金利の住宅ローンを利用できます。平均すれば、現在の変動金利型の金利よりは若干高いのですが、35年の間には金利が大幅に上がる局面も出てくるはずで、変動金利型の35年間の平均がこんなに低い水準ですむはずはないでしょう。

●中古、リフォーム市場活性化を目指して

 かつて、住宅ローン金利は1年で2%、2年で3%上がったこともあります。そこまで極端な上昇はないにしても、20年、30年の間には必ず金利が上昇、結果的に30年間の平均は2%台、3%台となることも十分にあり得るのではないでしょうか。

 そう考えれば、この「フラット35 リノベ」の金利がいかにおいしいものであるかを実感していただけるのではないでしょうか。それもこれも、国の予算を投入するからこそできる金利です。現在、国は中古住宅やリフォーム市場の活性化に全力を注いでいます。しかし、いろんな施策な展開しても、いまひとつ目に見える成果が上っていません。

 それならば、ということで、国の予算を使って金利を引き下げようということになったわけです。民間金融機関ではとてもじゃありませんが、こんな離れ業はできません。

●通常のフラット35より168万円もトク

 では、実際にどれくらい効果があるのでしょうか。図表3をご覧ください。

 借入額3000万円の場合、通常のフラット35だと毎月返済額は8万5000円ほどになり、35年間の総返済額は約3569万円です。それが、「フラット35 リノベ」なら、当初10年間は毎月7万7000円ほどに減って、総返済額も約3401万円に減少します。35年間の総額で比較すると、なんと168万円も負担が軽くなる計算です。

●リフォームローン利用だと毎月10万円超

 この「フラット35 リノベ」が使えず、通常の中古住宅取得のためのローン(年利1.08%、35年)が2500万円、リフォームローン(年利3.625%、18年)が500万円とすれば、毎月の返済額は10万円を超えてしまいます。しかも、完済までの総返済額はリフォームローンの変動金利型の金利が変わらなくても約3623万円で、金利が上がるともっと増えてしまいます。少なくとも「フラット35 リノベ」のほうが200万円以上もトクできるわけです。

 これだけ有利になる「フラット35 リノベ」。対象になるのは図表4にある通りです。リフォームによって、低炭素住宅、長期優良住宅などの認定住宅のほか、耐震性能、省エネ性能、バリアフリー性能などに優れた住宅にする必要があります。

 通常のリフォームに比べると、当然ながら費用は多少高くなるでしょうが、それでも0.3%台、0.4%台のローンを利用できるであれば、決して高くありません。これからの中古住宅購入には、忘れてはならないポイントといってよいでしょう。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)