人生は決断の連続。その際に大切なポイントは何か。そのヒントをお伝えするべく、『年収500万円で20年働く人 年収1000万円で10年働く人 損しないのはどっち?』(幻冬舎)の著者である公認会計士の平林亮子が、お金の観点から、さまざまな「どっち?」を投げかけてまいります。

●まとめ買いをすれば単価は下がりますが……

 先日、とある企業の経理部の方々との食事の席で、英語について話題になりました。その中にいた経理部に配属されたばかりの方が、海外の支店や子会社とのテレビ会議の際、英語でのやり取りに苦戦していると打ち明けてくれました。彼曰く、

「英会話スクールに通っているけれど、スクールでは講師が上手に相手をしてくれるから、実践とは違う。英会話スクールには、結構なお金を払ってきたのになあ」

とのこと。同じような経験をされている方は多いのではないかと思います。かくいう私も、そのひとり。仕事で英語を使う場面は少ないものの、英会話スクールには断続的に通い続けてきました。トータルで使った金額は、それなりになるのではないかと思います。

 もちろん、「英会話スクールに行けば英語が話せるようになる」という甘い考えは持っておらず、英会話スクールにお金を出すことは無駄遣いだとも思いません。もっとも、お金を払っただけの価値を生み出せたかどうかは、はなはだ疑問ですが……。

 さて、英会話スクール代が、英語の能力の向上度合と比較して価値あるお金の使い方だったかどうかは、ここでは棚に上げることにし、英会話スクールとお金にまつわる、もうひとつの命題について触れていこうと思います。

●「本当に使い切ることができますか?」

 それは、英会話スクールの受講料の支払方法についてです。スクールにもよりますが、チケット制だったり月謝制だったり、さまざまな支払方法があります。私が比較的長い間通った英会話スクールでは、レッスン受講時間と回数(回数に応じて期限も変わる)によって値段が変わるチケット制でした。

 平日の昼間のみ受講できるチケットをたくさん購入すれば、1回当たりの受講料が割安になりました。たとえば、平日昼間のみ受講できる30回分のチケットが15万円だったとしたら、終日使えるチケットは30回で18万円といった具合です。平日昼間のみのチケットであれば1回当たり5000円になりますが、終日のチケットであれば1回当たり6000円となり、前者のほうが割安になるというわけです。昼間の時間に通うことができるなら、そのチケットを購入すれば「お得」になるはず。私もそう判断し、昼間のみ使える時間限定のチケットを購入していました。

 でも、どちらが本当に「お得」になるかは、終わってみないとわかりません。平日の昼間しか受講できませんから、スケジュールを組むのが大変になる可能性があります。チケットには使用期限がありますので、仮に5回分使い切れずに期限切れとなったら、1回当たりの単価は

・15万円÷25=6000円

となってしまいます。

 終日にしていればチケットを使い切ることができたけれど、平日の昼間に限定していたからスケジュールが組めずチケットを使い切れなかった――。そんな結果になるとすれば、平日昼間限定のチケットは、全然「お得」ではないということになるわけです。正直なところ、私も割安になったのかどうか微妙だったと思います。

 また、50回分より100回分をまとめて購入するほうが1回当たりの単価は下がるのが一般的です。

 しかし、先ほどと同様、チケットを使い切れるかどうかで最終的な単価は変わります。しかも、100回分のチケットとなれば通常、受講期間も長くなり、英会話スクールが倒産してチケットが紙切れになるという危険性も高まります。それが現実となったケースは、過去にもありました。

 英会話スクールに限らず、いわゆる「まとめ買い」をすると、単価が低くなるケースは多いです。購入する際は、それが「お得」だと考えるでしょう。でも、少し冷静に振り返ってみることも重要です。「本当に割安だったのか?」と。

 まとめ買いしたものを、使わないまま廃棄したとしたら、本当にもったいない。そこで、いわゆる「まとめ買い」をするようなときには、常にこのように問いかけてみることをお勧めします。

「本当に使い切ることができますか?」
「本当にそんなに必要ですか?」

●金額だけではないメリット・デメリット

 ところで、先月より、とある英会話スクールの1年間コースの受講を始めました。学費は、1年分を前払いする方法と、月謝として支払う方法とを選択できるようになっていました。1年分を前払いすると、月謝の合計額より10%ほど安くなります

 私は迷わず1年分を前払いにしました。安くなるからということもありましたが、もっと重要な理由がありました。1年間通い続ける気合を入れるためと、お金の管理が楽になるだろうと考えたためです。

 1年間、コンスタントに勉強するスケジュールを確保しようとすると大変です。たくさんのお金を払うことで、気合や覚悟が持てると思いました。また、毎月の月謝について考える必要がなくなるため、お金のことを気にすることなく1年間を過ごせるようになると思いました。

 ところが、同じスクールに通う知人は、月謝を選択したとのこと。「続けられなくなる可能性もあるし、その場合の返金手続きを考えると、毎月振り込むほうが自分にとっては楽だから」という理由です。

 前払いを選択しても途中でスクールを辞めた場合には未消化分の月謝が返ってきます。でも、その手続きと毎月の振り込みを考えると、月謝の振り込みのほうが楽だということでした。

 また、月謝にしておけば、まとまったお金を手元に残しておくことができます。さらに、毎月の収支の中でやりくりしようと努力すれば、節約につながるかもしれません。

 世の中には、支払方法によって割安になるというケースがあります。それを利用しない手はないと思いますが、そんなとき、目先の割安感だけにとらわれない視点を持つことをお勧めします。ぜひ、以下の観点からも検討してみてください。

「使い切れるかどうか」
「本当に必要か」
「それによるデメリットはないか」
「お金の管理が楽なのはどちらか」

 本当に「お得」になったかどうかは、後から振り返ってみないとわからないことも多いのです。
(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表)