1月1日時点で土地、建物を所有している人を対象に課税される「固定資産税」。不動産を所有している人の宿命ともいえる税金だが、なんと昨今、役所のミスによって固定資産税を過徴収される事例が頻発しているというのだ。

 総務省が行った「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査」によると、2009年度から11年度の3年間で約97%もの市町村で税額修正があったことが確認されている。約19万5000人もの納税者に税額の減額修正があり、その割合は納税者の約500人に1人といった状況だ。

 決してあってはならない事態のはずだが、なぜこのように固定資産税の過徴収が頻発してしまうのだろうか。相続・固定資産税コンサルタントの杉森真哉氏に話を聞いた。

●原因は職員の負担増

「過徴収の原因は、ヒューマンエラーを主として多岐に渡ります。過徴収の大きい事例として、『住宅用地の特例措置』の適用漏れがあります。住宅やアパートに使用される土地は、評価額が6分の1になる制度なのですが、このサインをパソコン上の台帳に入力漏れしてしまうことによって適用漏れになるケースが多々あるのです」(杉森氏)

 実際、14年に埼玉県新座市で「住宅用地の特例措置」の適用漏れにより、1986年から27年間にわたって固定資産税を約4倍もの金額で過徴収され続けていたという事例もある。この家主は固定資産税を払い切れなくなってしまった結果、家を競売にかけられ、持ち家を失ってしまったという悲惨な結末を迎えた。

 このように、人生を狂わされる国民が出てくる可能性がある以上、小さなミスであっても決して許されない仕組みが不可欠だが、なぜミスは頻発してしまうのだろうか。

「私の考える原因のひとつとしては、平成の大合併を始めとする行政のスリム化に伴って職員1人当たりの仕事量が増えていること。固定資産税というのは1月1日時点での土地と建物の現況を調査してその調査結果に応じて課税されるのですが、この調査というのが、なかなか骨が折れる作業なのです。いくらコンピュータなどでシステムの効率化が図られていたとしても、この調査に関しては担当者が現地に赴くしかありません。つまり、肉体労働ともいえる業務なのです。

 さらに、納税通知の発送が4月以降になるため、この調査を終えてデータを入力する期限がだいたい1月から3月になるのですが、この時期は確定申告の時期と重なって、本来ならば税務署の管轄になる確定申告の対応に税務の役所職員が駆り出されてしまう市町村も多々あります。そのため、もともと人手不足のところに追い打ちをかけられているようななかで課税データの最終チェックを行うという危うい状況になっているのです」(同)

 さらに、ミスの原因はそれだけではないと杉森氏は続ける。

「役所の人事サイクルが早まっている、ということも原因のひとつとして挙げられます。以前はどの役所にも勤続10年以上の固定資産税の専門職員のようなポジションの方がいたのですが、現在は職員が2〜3年ごとに異動をしてしまうケースが多い。そのため、スキルが成熟する前に異動してしまい、なかなか専門的な知識やスキルを備えた職員が育たない状況になっているのです」(同)

 納税者側としても、行政側としても、決して望ましくはない状態といえるだろう。

●納税者自身による明細のチェックが重要

 役所の人手不足や人事の都合など原因は多岐にわたるようだが、我々が固定資産税を過剰に払う必要性は、もちろん一切ない。そのためには毎年の明細を納税者自身で細かく確認することが大切だと杉森氏は語る。

「役所にミスがある以上、納税者は自分の目で明細を細かく確認することが大事。毎年届く明細書と昨年の明細書を見比べて、不審な点、不明な点がないかをしっかりとチェックするようにするのがいいでしょう。評価額や税額が前年度と比較して、急激に上がった場合も、下がった場合も要チェックです。実際に役所がデータの誤った修正をして、急に固定資産税が高くなっていた事例もありました。過剰に支払っていた分は還付もされるので、少しでも不審に思ったらすぐに役所に問い合わせるといいでしょう」(同)

 過徴収された固定資産税が還付されるのは、原則的には過去5年間に過徴収された分になるので、毎年欠かさず確認すべきだ。また、固定資産税に誤りがあると、ほかに支払う税金にも影響が及ぶこともある。決して他人事ではないということを今一度再認識し、毎年の確認をより慎重に行うようにすべきといえよう。

 とはいえ、そもそも行政側がミスを頻発させてしまう体制に問題があるのはいうまでもなく、職員1人当たりの負担を減らすことが重要だ。

「市町村の現状の人員規模では、やはり限界があります。行政が業務のアウトソーシングを行い、民間企業でシステムの精度を上げて調査することが必要になってくると思います。現在も土地の調査は外部の業者に委託している役所も多数ありますので、不審な箇所をピックアップする段階までは問題なく行えます。しかし、その調査結果を最終確認するのは役所の限られた職員になりますから、どうしても手が回らない部分が出てきてしまいます。その職員たちをサポートする評価補助員のような人材も民間企業から出せるようになれば、改善が見込めるのではないでしょうか」(同)

 実際に建物の調査を民間企業に委託することができるように法改正をする動きもあるというが、まだ実現に至るような状況ではないようだ。行政側の改善がしばらく見込めない状況であれば、やはり“自分の身は自分で守る”ことが重要になってくるのだろう。

 毎年固定資産税を支払っている人は、明細が届いたら隅から隅まで目を通すことをおすすめしたい。
(文=出口雄己、昌谷大介/A4studio)