【アソビの達人-想像力と99%の汗】手作り音楽フェスができるまで(1)
市民の憩いの場・多摩川河川敷。休日になると、バーベキューを楽しむ家族連れや、草野球の試合など、平和な光景が繰り広げられる。ところが、その日はいつもと違う空気が流れていた。何の前触れもなく突然「音楽フェスティバル」が始まったのだ。サムライ、浜田省吾のそっくりさん、パンダ男…、日曜の河川敷ではあまり見かけない人たちが集まり、音楽をかき鳴らし、そして踊る。多摩川に「異空間」が出現したのだ。

多摩川に現れた浜田省吾のコピーバンド。まるで似ていない…舞台となったのは東急田園都市線の高架下。午前中からギタリストが飛び跳ね、DJがラム酒を飲みながらCDを回している。家族連れらは、異空間と一定の距離を保ち、バーベキューセットに火をおこしたり、犬と遊んだりしている。
ステージは、ぬかるんだ泥土の上に敷いたビニールシート、『少年マガジン』がでこぼこの地面に機材を置くための土台に使われている。雨は何とかやんだが風が強い。頭上は数分おきに電車が轟音を立てて通り過ぎていく。そんな苛酷な環境にもめげずにバンドは演奏を続け、ロックやダンスミュージック、弾き語りがごった煮状態で続く。
比べても仕方ないが、イベントの規模はフジ・ロック・フェスティバルの数百分の1程度、すべて素人の手作りである。しかし、商業主義のライブにはない無我夢中なテンションがひしひしと伝わってくる。

それぞれのスタイルでイベントを楽しむ観客イベントの参加者は、20代を中心に30代後半くらいまで。ステージ前で演奏に聞き入ったり、距離を置きレジャーシートで見物していたり。楽しみ方は様々である。
開始から数時間後、二十数人編成のサンバ・チームが演奏を始めたのを機に、会場の空気は一気に頂点へ上り詰めた。気が付くと、バーベキュー組の面々も紛れ込んで、ステージ前には巨大な人の輪ができあがっていた。ホームレスもチューハイ片手に見物している。
その時、突然会場の空気がぴんと張り詰めた。「おまわりだ」とささやく声が聞こえる。2人の警官が、固い表情で近付いてくる。どうやら通報を受けたらしい。対応に出たTさんによると「気をつかってやってくれ、とのことでした」。
このTさんがイベントの仕掛け人である。35歳の男性。「学園祭のようなピクニックをやってみたい」、その思いを友人たちと一緒に何ヶ月もかけて実現させたのだ。
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