【アソビの達人-想像力と99%の汗】手作り音楽フェスができるまで(3)
たった一度のお祭りで終わるはずだったゲリラ音楽フェスティバル「ミナモ・ミュージック・ジャンボリー」。反響は予想以上に大きく、「楽しかった」という声がブログやミクシィで広がっていった。そんな声に後押しされ今年も開催されることになったが、フェスを盛り上げていた勢いと無計画さによって様々な問題が露呈することになる。イベントはすでに“遊び”のキャパを超えていたのだ。

アコースティック楽器の演奏前日神社にお参りをした御利益なのか、雨はまだ降っていなかった。出演者数は、前回の10組から15組に増え、プログラムを消化するために、ステージをバンド、DJ、アコースティック楽器の3つに分けた。
ステージの傍らには、カレーやお好み焼き、焼きそば、飲み物の屋台が並び、イベントのロゴが入ったオリジナルグッズ-Tシャツや携帯灰皿など-も売っている。昨年に較べるとかなり本格的になっている。3000枚刷ったフライヤー(チラシ)の効果か観客の入りも悪くない。
年配の男性が1人、物珍しそうにステージを見ている。Tさんの会社の社長だという。「ここで得たことは仕事に生かせるはずだ」と共感してカンパもしてくれたという。
フェスをもう1回やってみようという話になったのは昨年の年の瀬。バンドからは「もう一度やるなら出演させてほしい」というオファーが来ており、1年前に初めて顔を合わせたスタッフ達とも「友達になっていた」。
スタッフは最終的には60人にまで膨れあがった。メーリングリストを活用して連絡を取り合い、新しいアイデアを積極的に取り込んでいった。

イベントと河川敷の夕暮れしかし、始まってみると次々と予期せぬ問題が発生した。
PA(音響設定)にひどく手間取り、時々楽器の音が消えてしまう。音圧の差がありすぎてバンドが盛り上がると弾き語りの演奏をかき消してしまう。リハーサルができないゲリラ・ライブの限界だった。
観客の盛り上がりとは対照的にスタッフ達の表情は硬かった。期待値も高くなると、それだけプレッシャーも大きくなる。どうしても“本気”にならざるを得なかった。「お客を過度に意識するとおもしろくない」とTさん。イベントはすでに“遊び”のキャパを超えていた。
一度は引き上げていった警官が再びやってきた。また通報があったのだという。「いいじゃないか」とホームレスが間に入り加勢してくれたが、中止は避けられなかった。
演奏中のバンドの出番が終わるのを見届け撤収となった。出演できないバンドもあった。1回目は無計画さや、行き当たりばったりがプラスに働いたが、今回はすべて裏目に出てしまった。
「イエーのノリだけでやれるほど甘くはなかった」とスタッフの一人は言う。薄暗闇の中、全員で後片づけをして引き上げた。翌日は普通に朝から仕事が待っている。
一方、参加者は十分にイベントを満喫していた。メーリングリストにはしばらくの間、「楽しかった」「ありがとう」という声が寄せられ続けた。問題は山積みだが、今回の失敗で学んだことは多い。「満足するまではやめられない」とTさんは言う。彼の頭の中では、すでに次の開催は決まっているようだった。
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