普段から出かけるデパートや公共施設にお気に入りのトイレを「確保」している人は案外多い。なるべく快適に用を足したいし、子ども連れであればおむつを替える場所も必要になる。ハンディキャップを持つ人にとっては外出を左右する問題だ。せっかく見つけたトイレが車イス対応でなかったり、段差があったり… そんな状況を改善しようと、トイレをチェックして「多目的トイレ」の情報をインターネットで発信しているNPOがある。


NPO法人「Check」代表の金子さん
■トイレ情報を集めるNPO

「トイレ目線で言えば、車いすの方やお年寄りをまったく寄せ付けない構造なんです。バリアフリーが叫ばれていますが、このような施設はまだ結構多いんですよ」
NPO法人「Check」の代表の金子健二さんは、待ち合わせたショッピングセンターのトイレを見て、さっそく解説してくれた。
階段の踊り場にトイレと待ち合わせのイス。百貨店や公共施設で見慣れている懐かしい光景にも問題が隠れていた。

体の不自由なお年寄り、車いすでの移動が必要な人など、何らかの形でハンディキャップを抱えている人々は、トイレのせいで外出が大きく制限される。
金子さんは、ネットを使って日本全国のトイレ情報を公開し、誰もが気兼ねなく生活・外出できるための「Check A Toilet ユニバーサルデザイントイレマップ」を作るためNPOを立ち上げた。ボランティア、自治体、事業者と一緒にトイレ情報を集めている。

普段何気なく使っているトイレに、金子さんはなぜここまで深く関わることになったのか。

■トイレが有るだけでは意味がない

金子さんは、2002年に大学を卒業して旅行会社に就職した。そこで、老人保健施設利用者の「ミニ旅行」を担当、トイレ問題に気付いた。参加者は介助が必要なお年寄り。世田谷から東京都心という気軽な半日旅行でも、事前の「トイレ下見」を必要とした。



踊り場に設置されたトイレ
最初は自治体や公共施設、イベント主催者などにトイレ情報を問い合わせたが「使える情報がほとんどなかった」。行って見なければ分からないのでは計画など立てられない。情報が更新されていなかったり、自治体ごとに表示方法が違っていたり、問題もあった。

「トイレの有無だけではダメで、どんなトイレかという情報が大事なんです」。整備を進めても情報がなければトイレは「ない」のと同じだった

金子さんは「誰かがトイレのせいで旅行できないのはおかしい」と思い、トイレ情報整備の必要性を考えるようになる。

2004年、ITを利用してトイレマップを作ることを目指してシステム会社に転職。2006年に、本格的に活動するため独立した。地図に強いIT企業や、バリアフリー分野で実績のある人の協力を得つつ、少しずつ活動を広げている。

現在、全国で2万件の多目的トイレ情報がデータとして登録されている。「おそらく、登録されるべき情報は10万件ある」と見ており、さらなる充実を目指している。

トイレに関する規格がほとんど整備されていないのも、トイレ情報に関するバラツキを生んでいる。Checkでは、大きさ、設備の有無、手すりの位置など、15分類、50項目以上にわたる点検項目も用意した。これによって、必要なトイレが探しやすくなった。利用はもちろん無料だ。

■みんなの力でトイレマップを作る

「トイレマップ」は見るだけでなく、ユーザー登録すれば、誰もがパソコンから情報を登録ができるようになっている。みんなの力で最新の多目的トイレ情報を集めようという取り組みだ。秋には「Mapion」を運営するサイバーマップ・ジャパンの協力により、携帯からも情報登録ができるようになる予定になっている。

「外出先でトイレを通ったときに、気軽に携帯から情報を提供してもらえれば、それがそのままハンディキャップを持つ人の手助けになります。まずはサイトにアクセスして、登録してみてください」と金子さん。私たちもさらに気軽に参加できるようになりそうだ(下に続く)。


ソーシャルライフの傾向と対策
社会貢献活動というと何だか難しそうだけれど、誰もが社会や人の役に立ちたいと思うものです。このコラムでは、NPOやNGOとの意外な接点など、大きく変わろうとしている「ソーシャルライフ」の傾向と対策を探っていきます。

田中 康文(たなか・やすふみ)
1969年生まれ。アットニューストリーム(@NEWSTREAM)有限会社代表。千葉県NPO活動推進委員。誰もが気軽に社会貢献できる仕組みを考える「ソーシャルライフ・ラボ」の立ち上げを準備中。経団連事務局で企業の社会貢献活動やNPOとの関係強化などを担当、3年間の韓国駐在などを経て独立。「シーズ=市民活動を支える制度をつくる会」プログラム・ディレクターなどを務めた。



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