トヨタ自動車グループの労働組合でつくる全トヨタ労働組合連合会(佐々木龍也会長)は13日、広島市で記者会見を開き、2017年春闘でベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分として月額3000円以上を統一要求する方針を発表した。ベアを要求すれば4年連続となるが、トランプ次期米大統領の政策や新興国経済の減速懸念など先行きにはリスク要因も多く、交渉の行方は予断を許さない。

 「為替の影響でグループの収益環境は厳しいが、格差是正や賃金引き上げの流れを踏まえて決めた」

 佐々木会長は同日の記者会見で月額3000円以上の要求方針を決定するに至った経緯をこう説明した。

 全トヨタ労連は13日から14日にかけて、広島市で中央委員会を開催。13日の中央委員会で3000円以上の要求方針を提案し、14日に採決して正式決定する。3000円以上で決定すれば16年春闘と同じ水準となる。具体的な金額を示すのは3年連続。

 主要労組のトヨタ自動車労働組合も、月額3000円以上とする全トヨタ労連の方針の正式決定後、要求案を検討して、1月末に組合員に提示する予定だ。

 国内最大の製造業であるトヨタグループは、春闘相場の形成に大きな影響力を持つが、交渉に向けては期待と不安が交錯している。

 追い風になるのは昨年後半からの円安の進展。為替が1ドル=1円円安に振れるとトヨタの連結営業利益は年400億円上振れし、業績改善につながるためだ。原油価格の値上がりや円安で国内の物価上昇への期待が高まっていることや政府の賃上げ要請も支援材料。安倍晋三首相は経済の好循環の実現に向け、経済界に対して4年連続のベア実現を求めており、トヨタの経営側は「社会性」も念頭に交渉を進める姿勢を示す。

 一方でリスク要因も山積している。国内新車販売は低迷したままで、新興国経済も通貨安で減速感が強まっている。懸念されるのがトランプ氏が大統領就任後に打ち出す政策。同氏はメキシコなどとの通商協定の見直しをはじめ強硬な政策を掲げており、生産拠点や輸出戦略の見直しを迫られる恐れがあるためだ。

 20日の就任後に打ち出されるトランプ氏の政策次第で、交渉の風向きが大きく変わる可能性もはらむ。それだけに「就任後の言動や政策を注視していかねばならない」(佐々木会長)と、労使双方がその動向を固唾をのんで見守っている。

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 ■2017年春闘に向けた期待と懸念

 【期待】

 ・トランプ米次期大統領の経済政策期待による株高

 ・安倍晋三首相による経済界への賃上げ要請

 ・円安に伴う輸出産業の業績改善

 【懸念】

 ・トランプ氏の通商政策変更による海外経済の混乱

 ・米国の利上げに伴う新興国経済への影響

 ・国内物価上昇率の伸び悩み