旧石器人というと、石を打ち割った打製石器を手にシカやナウマンゾウを追い掛けて暮らしていたというイメージが強い。だが、陸上での狩猟と併せ、海や川で釣りも楽しんでいたようだ▼約2万3千年前、世界最古の釣り針が沖縄の遺跡から出土したとの県立博物館・美術館(那覇市)の発表に想像力をかき立てられた。当時の人々は釣り糸を垂らしながら何を考えていただろう。焼くか、煮るか、それとも蒸すか…。現代人と同じように美味な情景を思い描いていたのかもしれない▼遺跡からは、シカやイノシシの骨に加え、モクズガニの爪やウナギをはじめ魚の骨や貝も大量に見つかっている。カニは爪の大きさから推定すると秋の産卵期に大型化したもの。うまみがぎっしり詰まった旬を知っていたらしい▼海に囲まれた環境なら古くから魚介類を食材にしていたとしてもおかしくない。しかし、分からないことが多い旧石器時代。すでに行われていた釣りという高度な漁労法と食生活の一面が裏付けられたとされる▼現代に目を向けると、東京湾をはじめ内・外房ではアジ、マダイ、ヒラメ、タチウオと活況を呈し、珍味のイイダコも佳境に入る。釣り人たちは腕が鳴るだろう▼相次ぐ台風に秋雨前線の停滞で天候不順が続く。時し化け後の期待も大きいはず。秋晴れに焦がれ、旬をめでる声が太古と現代で共鳴しそうだ。