軽井沢町で昨年一月十五日に起きたスキーツアーバス転落事故では、訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加で深刻なバス運転手不足に拍車が掛かっていた背景があった。しかし外国人が個人旅行にシフトして、貸し切りバスの需要が減少。インバウンド専門業者が国内旅行に参入するなど競争が激化し、経営悪化にあえぐ中小業者が相次いでいる。
 「インバウンドや爆買いはもう昔の話。今年はこれまで敬遠していたスキーバスも請け負っているが、焼け石に水。もう倒産するか違法に走って安全コストを削減するしかない」。関東地方にあるバス運行会社の男性社長が悲痛な声を上げた。
 観光庁の調査によると、インバウンドのうち貸し切りバス利用につながる団体ツアーの割合は二〇一〇年七−九月期の約三割に対し、一六年七−九月期は約二割。割合は三分の二の規模になった。
 日本政府観光局の担当者は「リピーターは個人旅行になる傾向がある。必然的に貸し切りバスを利用するような団体旅行の申し込みは少なくなる」と指摘する。
 東京五輪のある二〇年にインバウンドを四千万人に倍増する目標を掲げる国も、外国人になじみの薄い地方都市をPRし、リピーター増加に力を入れる。
 こうしたあおりを受け、バス業界では悲鳴を上げる会社も少なくない。あるバス運行会社の男性社長は仕事を取るため、法定下限を二割下回る運賃で仕事を取っていると言う。
 「国は五輪需要を見据えてバスを確保してほしいと言うが、やっていることは個人旅行の促進で矛盾している。うちも今年一年の命だよ」とこぼす。
 軽井沢のバス事故では、運転手不足で経験の浅いドライバーが不慣れな大型バスを運転した背景がある。「インバウンドが憎いと考えていた時期もあった」と打ち明ける遺族もいるほど。そのインバウンドが減少し始めた今、新たな競争激化で困窮した業者が不正に走る状況が広がっている。

 (五十幡将之)
    ◇
 大学生ら十五人の未来を奪った軽井沢町スキーツアーバス転落事故から十五日で一年を迎える。繰り返される悲惨なバス事故を防ぎ、悪質な業者をなくすことはできないのか。バスを取り巻く実態に迫る。